現代文化学基礎演習2（2000年度：永井）

映像で見る占領期の日本

－占領軍撮影フィルムを見る－

研究報告

最終更新：2000年6月9日

伊江島のアメリカ軍

澤田俊太郎

沖縄戦の概要

1．緊迫する現状

(1)1941（昭和16）年12月8日、日本軍によるハワイ真珠湾攻撃によって太平洋戦争が始まった。沖縄戦は、日本軍と米英連合との最後の決戦であった。また、1931年の「満州事変」に始まる日中戦争を経て、太平洋戦争に至る「１５年戦争」の総決算の戦いでもあった。

(2) 1942（昭和17）年6月のミッドウェー海戦で敗北した日本軍は、太平洋戦線からの後退を始めた。そして、米軍は日本の占領する太平洋上の島々を次々と制圧し、日本本土攻略をめざし北上していった。こうした戦況のなかで台湾と沖縄の基地の重要性が高まり４３（昭和18）年夏ごろから、沖縄本島、伊江島、宮古島、石垣島など10数か所に日本軍の飛行場建設が突貫工事で行なわれた。

(3)1944（昭和19）年3月、南西諸島の防備を強化するため、沖縄守備軍・第32軍が創設され、6月から中国戦線や本土からの実戦部隊が配置された。同年6月29日、軍用船・富山丸が鹿児島から沖縄へ向かう途中の徳之島海上で、米潜水艦に撃沈され、独立混成第44旅団・第45旅団の将兵約4,600人のうち、約4,000人が犠牲になった。7月になって、老幼婦女子の疎開計画が決定され、8月中旬から学童疎開が始まった。しかし、8月22日「対馬丸」が米潜水艦ボーフィン号の攻撃を受け沈没し、825人の学童を含む約1,500人が暗闇の海に呑みこまれていった。現在も水深800ｍの海の底に対馬丸の船体と犠牲者の遺体が眠ったままである。

(4)10月10日、米軍のＢ29爆撃機などによる激しい空襲（10・10空襲）が那覇・首里を中心に行なわれた。延べ900機による9時間にわたる空襲で548人が死に、家屋1万1,451戸が焼失した。那覇は市街地の90％を焼失し、貴重な歴史的遺産も数多く失った。県民の1月分の食糧30万俵を失った。沖縄戦前夜、米軍はすでに制海権と制空権を握っていた。

10・10空襲のあと、第32軍から最精鋭の第9師団（武部隊）が、台湾防備の強化のため引き抜かれた。そのため守備軍は兵力不足をきたした。補充部隊を招集するため、2月から3月にかけて法的根拠もないまま、16歳から45歳までの男子を司令官の命令で召集して、陣地構築や飛行場の建設等に動員し、戦場にもかりだした。

2．沖縄戦はじまる

(1)1945（昭和20）年3月23日から南西諸島は、米軍による激しい空襲をうけ、25日には米軍艦隊が、南北127㎞の細長い島を包囲した。そして、26日米軍は慶良間諸島へ上陸した。米軍は、慶良間諸島が、水上機基地・補給基地に都合の良い風波のない錨地として、作戦基地に適している（ニミッツ元帥）と、同島攻略を重要視していた。上陸した米軍は、米国海軍軍政府布告第1号「南西諸島における日本のすべての行政権、司法権を停止し、最高行政の責任は占領軍司令官の権能に帰属させる」を公布（ニミッツ布告）した。米軍は29日までに、同諸島を制圧したが、その間に日本守備隊の直接・間接の命令や、捕虜になる恐怖感などから、住民700余人が「集団自決」をとげた。

(2) 米軍は、沖縄戦をアイスバーグ（氷山）作戦と呼び、約1,500隻の軍艦と、戦闘部隊と補給部隊を合わせて54万8,000人もの兵員を動員して沖縄を攻略した（上陸は18.3万人）。米軍が上陸をする直前の沖縄の人口は約45万人弱だった。沖縄上陸の狙いは、沖縄を占拠して基地化し、それによって南西諸島の制海権と制空権を確保し、日本本土の攻略に備えることであった。

一方、沖縄を守備する日本軍の兵力は、約11万1,000余人（陸軍8万6,400人、海軍１万人、現地動員の防衛隊員・学徒隊2万人）であった。兵員の数は、米軍の約4分の1にも足らなかった。このような兵力の差は「プロレスラーと赤子のようなもの」といわれたほど大きかった。

(3) 沖縄守備軍・第32軍は、第24師団（山部隊）、第62師団（石部隊）、独立混成第44旅団（球部隊）のほか、いくつかの砲兵部隊が主力をなしていた。米軍は、米太平洋艦隊司令官兼太平洋方面部隊指揮官チェスター・Ｗ・ニミッツ大将配下の、サイモン・Ｂ・バックナー中将の率いる第10軍で、その主力は陸軍第24軍団と第3水陸両用軍団であった。

このほか、Ｈ・ロウリングス中将の率いる英国太平洋艦隊が、米第5艦隊に所属して参戦し、宮古・八重山を攻撃した。

3．沖縄本島へ米軍上陸

(1)1945（昭和20）年4月1日、午前8時30分、米軍が沖縄本島中部西海岸（北谷・嘉手納・読谷）に上陸を開始した。日本軍が水際作戦を放棄したため、その反撃はなく、上陸部隊はわずか1時間内で1万6,000人の兵士を上陸させた。米軍が「ピクニック気分」で無血上陸ができたもう一つの理由は、米第2海兵師団が南部から上陸しようとみせかける陽動作戦に、日本軍がふりまわされて中部戦線が手薄になっていたことであった。

(2) 戦力の劣る日本軍は、主力部隊を守備軍司令部のある首里を防衛するため、首里近郊の地下陣地などに集結させ、持久戦に備えていた。そのため、読谷の北飛行場、嘉手納の中飛行場を放棄していたので、両飛行場は、上陸日の午前中に、米軍に占領された。上陸した米軍は東海岸に進撃し、4月3日には沖縄本島を南北に分断した。

4．北部戦線

(1) 沖縄本島を南北に分断したあと、北部に向かった米軍は、4月13日には北端の辺戸まで進撃した。17日までに北部地区守備隊として配置されていた国頭支隊の本拠地八重岳を制圧し、20日ごろには本島の北部全域を占領した。

(2) 伊江島においては、日本軍の飛行場の攻防をめぐって、激しい戦闘が続いた。この島には約2,700人の日本軍が配置されていたが、正規軍だけでは兵員が足りず、住民のなかから防衛隊、青年義勇隊、女子協力隊などとして、1,200人を動員した。4月16日から始まった戦闘は1週間に及び凄惨を極めた。日本軍は全滅し、防衛隊員や女子協力隊員も爆雷や手榴弾を持って体ごと米軍の戦車に突撃していった。伊江島では4,706人が戦死したが、そのうち約1,500人は地元住民であった。また、この島のアハシャガマで100人余の住民の「集団自決」があった。米軍も日本軍や住民の予想外の抵抗で、1,120人の死傷者をだした。報道記者として世界的に有名だった米軍従軍記者のアーニー・パイルも、この伊江島で日本軍に銃撃され戦死した。

(3) 北部戦線では、日本軍の敗残兵たちが、国頭の山中を転々と逃げ延びていたが、各地で住民から食糧を強奪したり、住民をスパイよばわりして虐殺した。

5．首里をめぐる主力部隊の攻防戦

(1) 上陸後、南へ向かった米軍は、4月7日に牧港・嘉数・我如古・和宇慶を結ぶ日本軍の陣地前に達すると、初めて日本軍の猛烈な反攻にあった。日本軍は、嘉数高地（宜野湾市）と前田・伊祖の高地（浦添市）に主陣地を築き、東海岸線の運玉森、西海岸線の天久台地にも陣地を構えていた。

(2) 激戦だった中部戦線では、特に首里北方の嘉数高地と前田で激しい戦闘が続き、40日余にわたって一進一退の攻防が展開された。日本軍は急造の爆雷をかついで米軍戦車に体当たりしたり、夜間の切り込みなどで米軍と戦った。

5月3日以降、日本軍は二度の総攻撃を行なったが破れ、約6万4,000人の戦死者を出した。主力部隊3個師団の約85の兵員を失った。5月中旬から下旬にかけて激しい戦闘が続き、米軍の被害も大きく、米第6海兵師団はシュガーローフ（那覇市安里の北側丘陵地）の戦い（9日間）では2,662人の戦死者と戦闘恐怖症など1,299人の精神障害者をだした。

6．特攻作戦

(1) 九州・台湾の日本軍は、沖縄へ延べ7,800機の大量の航空機を送り、「菊水作戦」とよばれた特攻作戦も行なった。この特攻作戦は、6月22日まで10次にわたって行なわれ、20歳前後の海軍飛行予備学生たちの多くが特攻機で出撃し、再び帰還することはなかった。

(2) 戦艦「大和」を中心とした海上特攻隊も沖縄に向かったが、4月7日、九州の南方海上で撃沈された。その時日本海軍は、沖縄戦に総力を投入したが、飛行機も軍艦もそのほとんどを失った。

7．南部へ撤退

(1) 日本軍は、首里の第32軍司令部攻防戦で米軍の圧倒的力の前に屈し、首里の司令部は北・西・東の三方から包囲されてしまった。第32軍司令部は、首里城の地下に堅固な陣地壕を築いて、牛島満司令官、長勇参謀長、八原博道高級参謀などの軍首脳部が作戦指揮にあたっていた。司令部壕は、通称「天の岩戸戦闘司令所」と命名されていた。

(2) 三方を包囲された司令部では、「玉砕」か「降伏」かの論議が行なわれたが、5月22日南部の喜屋武半島への撤退を決定した。沖縄戦を引き伸ばすための作戦であった。5月27日、日本軍首脳は司令部壕から抜け出し、南部へ撤退を開始した。5月31日、司令部壕は米軍によって占拠された。第32軍の撤退作戦に対し、小禄飛行場の海軍部隊（大田実司令官）は撤退せず、6月6日米軍の攻撃をうけて全滅した。

守備軍が撤退していった南部一帯には自然壕が多く、多くの住民が壕の中に避難していた。そこへ守備軍兵士と、軍を頼って軍と共に南部へ移動した住民が入り交じって喜屋武岬に追い込まれていった。6月7日ごろ米軍により喜屋武岬一帯は包囲され、東西10㎞足らずの地域に、約3万人の将兵と10万人余の住民がひしめいていた。住民は自然壕や海岸の岩影、アダン林の中などに避難し隠れたが、米軍は戦車を先頭に、火炎放射機などのあらゆる火器を使用し、海からは艦砲射撃、空からは飛行機の爆撃や機銃掃射など、情け容赦なく攻撃を加え、多くの守備軍兵士や地元住民が命を落とした。また、住民の中には頼みとする「友軍」に食糧を奪われ、壕を追い出されたり、スパイよばわりされ、殺された者も多かった。

(3) 南部戦線において守備軍は、玻名城（具志頭村）・八重瀬岳（東風平村）・与座岳（糸満市）・国吉真栄瀬岳（糸満市）の台地を結ぶ線に陣地を築いて抵抗した。しかし、6月17日までには、陣地は突破され摩文仁岳の司令部壕に迫ってきた。18日には米軍のバクナー中将が、牛島司令官に降伏勧告状を送ったが、牛島司令官はこれを拒否した。しかし、司令官は第10方面軍宛に訣別電報を送っていた。同日バクナー中将は真栄里部落で日本軍の砲撃で戦死した。

(4)19日に牛島司令官は、「各部隊は各地における生存者中の上級者これを指揮し、最後まで敢闘し、悠久の大義に生くべし」と命令を出し、23日未明、長勇参謀長と共に、摩文仁岳中腹の司令部壕内で自決をした。米軍は、6月21日にはニミッツ元帥の名で沖縄戦の勝利を宣言していた。米軍の記録でも同日、日本軍の組織的抵抗が終了したと記されている。

8．宮古・八重山等の状況

(1) 沖縄戦というと、どうしても米軍が上陸して激しい地上戦を展開した沖縄本島を中心に考えてしまいがちであるが、米軍が上陸しなかった先島や、離島の島々でも住民は大きな犠牲をこうむった。先島の攻撃作戦をうけもったのは、イギリス太平洋艦隊であった。連合国軍が両先島に上陸することはなかったが、米軍機の空襲や英艦船の艦砲射撃などで大きな被害をあたえた。しかし、何よりも地元住民を悩ませたのは、食糧不足とマラリアとの戦いであった。

(2) 石垣島では、住民の貴重な農耕地が強制接収され、3つの飛行場が建設された飛行場建設には、八重山郡民が総動員されただけでなく、請け負い業者が連れてきた朝鮮人労働者（約600人といわれている）も働かされていた。朝鮮人労働者の主な仕事は、ダイナマイト爆破による石割り作業など危険なものであった。

飛行場の建設とともに、石垣島を中心に各地に陣地が築かれ、約1万人の兵隊が配置された。八重山郡では、米軍の上陸がなかったため砲弾による戦死者は少なかったが、住民の多くが強制的にマラリアのはびこる山岳地帯に避難させられたため、住民の半数余がマラリアにかかり、3,647人（人口の11パーセント）が死亡した。とくに波照間島の被害は大きく、全人口の三分の一がマラリアで亡くなったといわれている。

(3) 宮古島でも貴重な農耕地が強制接収され、3つの飛行場が建設された。人口6万人余の島々に約3万人の日本軍が駐留したことで、農地がつぶされたこともあって極端な食糧不足とマラリアに悩まされた。また宮古・八重山とも、学童を含む一般住民が、台湾・九州への疎開途上で疎開船が米軍機や潜水艦に攻撃されて多くの遭難者を出した。

(4) 沖縄本島北方海上に浮かぶ伊是名島では、特務教員や国頭支隊の敗残兵らの命令で、漂着した３人の米兵を島の防衛隊も加担して虐殺するという事件がおこり、しばらくして、今度は数人の住民が日本軍によって虐殺されるという事件がおこった。しかし、隣島の伊平屋島や本島西海上の粟国島では、日本兵がほとんどいなかったことで米軍への投降が比較的スムースに行われ、大きな犠牲者をだすことはなかった。

本部半島の西海上に浮かぶ瀬底島では、隣島の伊江島の経験から、日本軍がいると住民が犠牲になるとして、本島から逃げて渡ってきた日本兵を追い返したという例もあった。本島中部の中城湾岸には砲兵陣地が築かれ、東海上に浮かぶ津堅島も砲台が置かれていたため激戦地となった。

本島西海上に浮かぶ渡名喜島では、本島との連絡が途絶え、食糧不足はもちろん不自由な生活を余儀なくされたうえ、戦争終結が知らされたのは9月半ばになってからであった。

9．日本軍9・7に降伏す。

(1) 6月25日、大本営は沖縄戦における日本軍の組織的作戦の終結を公表したが、その以降も米軍との戦闘は続いた。6月26日に米軍は久米島に上陸した。同島には海軍見張り所分遣隊（鹿山隊長他約30名）が駐屯していた。

この久米島において、鹿山隊によって20人の住民が虐殺された。29日までにスパイ容疑で10人が殺され、日本が降伏した8月15日以後も10人が虐殺された。

(2) 6月30日には、第32軍の第24師団（山部隊）第32連隊の雨宮巽師団長、木谷美雄参謀長が自決し、南部での敗残兵の掃討戦が終わった。米軍は、7月2日に沖縄作戦の終了を宣言した。しかし、北部での掃討戦が終わったのは8月4日だった。

日本軍が正式に降伏調印した日は9月7日であった。同日、嘉手納の米第10軍司令部において、南西諸島の日本軍代表（沖縄守備隊を代表して宮古島から第28師団の納見敏郎中将、奄美大島から陸軍代表・高田利貞中将、海軍代表・加藤唯男少将）と米軍の代表（第10軍司令官スチルウエル大将）との間で降伏文書に調印が行なわれ、日本軍は正式に降伏した。

10．沖縄戦の特徴

(1) 沖縄戦は、日本国内で住民をまきこんだ唯一の地上戦だった。アジアの隣国を侵略し続けてきた日本が、初めて日本国内での地上戦に追い込まれた。

(2) 沖縄戦は、大本営にとっては当初から＜捨て石作戦＞であり、本土防衛の準備が完了するまでの時間稼ぎであった。

(3) 現地自給の総動員体制だった。本土決戦に備えての兵力温存方針のもと、兵力の不足分は現地で防衛隊員、学徒隊員を徴用した。また、婦人会や学校の生徒も勤労奉仕隊などに動員され、国民学校の児童までも土石運びに駆り出された。

(4) 非戦闘員・一般住民の安全対策が不十分だった。国家間の戦争において戦場となる所の非戦闘員をどうするか、その安全対策を講ずるのが当然である。沖縄戦において、日本軍による非戦闘員や住民の安全対策は不十分で、むしろ米軍上陸前から＜軍民共生・共死＞を住民に鼓吹した。

(5) 日本軍によって、多くの住民がスパイ容疑で殺害され、また、各地で住民の「集団自決」が発生した。日本軍は沖縄住民を信用していなかったのだろうか。「沖縄の方言を使う者はスパイと見なし処分する」と命令した。なぜ、沖縄のことばを使うとスパイなのか………。久米島において、証拠もなく住民殺害にみずからも手を下した守備隊長は、「厳然たる措置をとらねば、米軍にやられるより先に、島民にやられてしまう。だから、断固たる措置が必要だった」と述べている。久米島では、2歳から10歳までの子供6人が家族と一緒に殺された。

また、各地で住民の「集団自決」が起こった要因として、軍命として出された「悠久の大義に生きよ」や、戦陣訓の「生きて虜囚の辱めを受けるなかれ」などの思想教育が徹底されていたことが大きな要因といえよう。

沖縄戦年表

1944年
2.25 米潜水艦、沖大東島を砲撃
5. 3 沖繩本島、宮古、伊江島で飛行場が建設される
10.10 米軍機が空襲、那覇市の90％が焼ける。（10.10空襲）

1945年
1. 3 米軍機が宮古、八重山、沖繩本島を攻撃
2.19 県内の中等学校単位に防衛隊が結成される
3. 6 満15歳から45歳の男女は、全員現地召集される
3.23 米軍の沖繩本島爆撃が始まる
3.25 県立第一高女生徒、南風原の野戦病院に入隊
3.26 米軍が慶良間諸島に上陸し、「ニミッツ布告」を公布して最初の占領行動を行う
4. 1 米軍は沖繩本島中部の西海岸に上陸。午前中に北、中両飛行場を占拠する
4. 3 米軍は恩納村仲泊と石川を結ぶ線で、沖繩本島を南北に分断
4.16 米第77歩兵師団、伊江島に上陸
4.18 米従軍記者アーニー・パイルが伊江島で戦死
5.11 米軍は第32軍司令部壕のある首里陣地を包囲し、総攻撃を開始
5.27 第32軍司令部は首里から摩文仁へ撤退
6.17 米上陸部隊司令官バックナー中将からの降伏勧告を第32軍の牛島司令官が拒否
6.18 バックナー中将、戦況視察中に戦死
6.21 米軍は沖繩を確保したと発表
6.23 牛島満司令官と長勇参謀長が摩文仁の司令部壕で自決
9. 2 日本政府、米艦ミズーリ号上で降伏文書に調印
9. 7 日本軍正式に降伏文書に調印する。

伊江島基地（射爆場）問題

在沖米軍がその占領政策から半永久的な軍事基地設営に具体的に転換しはじめたのは、いうまでもなく49年の中華人民共和国の成立、朝鮮戦争（51～53年）休戦直後からのことである。むろんアメリカは、嘉手納空軍基地や那覇軍港から直接朝鮮半島へ出撃しながら、並行して在沖基地の整備・強化をはかっていた。たとえば49年末から北谷村北谷区の住民に移動命令、浦添村一部農耕禁止、真和志、越来村（今の沖縄市）立退き、読谷村楚辺（「象のオリ」）立退き、国頭村ラジオビーコン工事開始のため移動、具志川村昆布地区での工事などによって基地は拡大され、住民はそれにふりまわされていた。

「本土」では、日本人民はアメリカの政策と対米従属の日本政府に「全面講和」を対置して「戦後民主主義」の高揚期を迎えようとしていた。しかし、ここ沖縄における、今日の軍用地にかかわる法制上の問題の多くは、52年に発効した対日講和条約の第三条から生じている。つまりその第三条によって沖縄はアメリカの施政権下におかれたのである。それ以来アメリカは基地設営のために土地収用にかんする法令を次々に発令し、土地の接収をおこなっていった。こうしてアメリカはそれまでの第二次大戦の延長としての占領から「講和」以後の沖縄統治・軍政（後に高等弁務官制）政策へと転換したのである。（宮里政玄著『アメリカの沖縄統治』参考）

1．目的を明確にしない米軍の測量

1953年、伊江島にはじめてアメリカ工兵隊が測量の名目でやってきた。工兵隊は測量の目的について道筋をたてて説明をしなかったので、住民たちは漠然とした疑問をいだいていた。ほぼ一週間におよぶ測量作業に村長以下が協力し、作業の日給を支払うので捺印してくれという申し出にそそくさと応じたという。同じ時期に真和志村（今の那覇市）、読谷村などでも土地収用通告や強制接収が行なわれていた。だが伊江島民にはそのような情報を入手したり、たがいに交換する手段はなく、米軍の命令に唯唯諾諾の傾向が当然のごとくまかり通っていた。

1954年1月、アイゼンハウアー大統領による「極東の平和・安全と自由諸国擁護のために琉球列島を無期限保有する」という声明、それにひきつづき本島各地における土地接収およびその軍用地代一括払い（半永久的貸借）の布令が発表された。この時になってやっと本格的にこのことが政治レベルの問題に発展しはじめた。琉球立法院は『土地四原則』を可決した。それは大略次のとおりである。

一、すでに米軍が接収した土地には適正な補償を行なうこと。
二、地代は毎年払いとすること。
三、新規の接収はしないこと、すでに接収したところで、かつ使用していない土地は返還する。
四、損害補償は速やかに行ない、法規の改正と廃止を要望する。

２．銃剣とブルドーザーによる農地接収

その年（54年）工兵隊は伊江島で四軒の農家の立退きを命じ、その作業が完了した後ではじめて、この地に射爆場をつくると公表したのである。射爆場というのは飛行機やヘリコプターから実弾の機銃掃射、模擬爆弾投下、パラシュート降下および物資投下訓練などを行なう演習場のことである。もともとその地には、旧日本軍の手で設営された3本の滑走路があり（地図参照＝略：サイト管理者注）、米軍はそれを離着陸に利用しながら射爆訓練をするという計画である。これは付近住民にとって、まったく寝耳に水の話であり、きわめて危険な基地になることがわかった。事実、事故はそれ以後予想通りに頻発し、多くの儀牲者が出ることになる。

さらに射爆場、滑走路および通信隊基地などの面積が拡張され、それは島の面積22平方キロの63％、13.9平方キロに達した。長さ東西8キロ、南北4キロ、自転車で一周するなら一時間余というこの小さな島における基地造成は、文字通り住民にとって死活の問題であった。真謝・西崎地区を含む142戸のうちの半数を超える74戸がその範囲のなかに入っていた。もはやあれこれの農家の立退きや避難などで片づくような問題ではなかったのである。

翌55年3月、約300名の工兵隊と憲兵が3隻の大型上陸用舟艇で上陸してきた。兵たちは、たちまち13戸の家屋を破壊し、妨害する農民には暴力を加えた。それでも服従しない者は捕え、別途、軍事裁判にかけた。やがて接収が終了すると付近一帯に有刺鉄線を張り、農民の侵入を禁止した。米兵は鉄線の外にテントを張って、そのなかに農民の家族ら77名を詰め込んだ。これが、いわゆる「銃剣とブルドーザー」による農地接収のあらましである。それから2か月後、本島から現地を訪れた琉球大学の学生で、後に沖縄教職員組合書記長となった嶺井正和氏は、次のようにのべている。

「琉大の学生会でも支援のカンパを行い、5月に島へ調査に渡った。とりのこされた家の跡には、すこし草がのびかかっていたが、それでもその時の無謀さを思わせるには十分であった。家を失った人々は飛行場のワキの暗いテントの中で肩を寄せ合っていたが、そこには土に生きる不屈の意志があった。」（『新沖縄文学』1981年）

沖縄の米軍基地の概要

1．概況

沖縄には、1995年3月末現在、53市町村のうち25市町村にわたって45施設・25,012haの米軍基地があり、県土面積の約11％、沖縄本島面積の約20％を占める。また、全国と比べてみると、在沖米軍基地は全国にある米軍基地面積の25.3％に相当し、北海道の34.4％に次いで大きな面積を占めている。中でも米軍が常時使用できる専用施設に限ってみると実に全国の74.6％が沖縄に集中している。沖縄の面積は日本全国の0.6％であり、他の都道府県に比べて過重な基地の負担を負わされていることを示している。

2．地区別分布状況

a. 在沖米軍基地の地区別分布状況をみると、北部地区に最も多く、全面積の69.8％（17,454ha）が北部地区に集中している。同地区には、県内最大の演習場で、部隊の移動訓練やサバイバル訓練、ゲリラ訓練等様々な訓練が行われている「北部訓練所」をはじめ、実弾射撃訓練及び爆発物処理施設として使用されている「キャンプ・シュワーブ」、「キャンプ・ハンセン」等の基地があり、北部地域の21.2％を米軍基地が占めている。

b. 次いで多いのが中部地区で全体の29.0％（7,263ha）を占めており、同地域の面積の26.3％が基地で占められている。同地区には、太平洋地域で最大の米軍飛行場である「嘉手納飛行場」や在日米軍基地でも有数のヘリコプター基地である「普天間飛行場」をはじめ、県道104号線越え実弾射撃演習の実施部隊が配備されている「キャンプ瑞慶覧」、大規模な弾薬貯蔵施設である「嘉手納弾薬庫地区」、パラシュート降下訓練が実施されている「読谷補助飛行場」、「ゾウの檻」と呼ばれる通信施設をもつ「楚辺通信所」、米軍原子力潜水艦の寄港地となっている「ホワイトビーチ地区」等々米軍にとって極めて重要な基地が集中している。因みに、在沖米空軍の司令部もこの地区におかれている。

a. 次に、南部地区の米軍基地の面積は全体の0.8％（202ha）、地域面積の0.6％となっている。同地区の米軍基地は、「那覇港湾施設」と離島地域にある射爆撃場である。

b. 八重山地区の米軍基地は、尖閣諸島にある二つの射爆撃場のみであるが現在はほとんど使用されていない。なお、宮古地区には米軍基地はおかれていない。

c. 次に、市町村別の米軍基地の状況をみると、沖縄の米軍基地は県下53市町村中25市町村にまたがる広大な地域に分布しているが、中でも広大な演習場を抱える北部市町村の占める割合が大きく、「北部訓練場」を抱える国頭村が全基地面積の21.0％、東村が14.5％を占めており、次いで「キャンプ・シュワーブ」を抱える名護市の9.4％、「キャンプ・ハンセン」を抱える金武町9.0％となっている。

また、これらの基地の市町村面積に占める割合をみると、嘉手納町の82.9％を筆頭に金武町の59.9％、北谷町の56.7％、宜野座村の51.5％と、これらの４町村では実に行政面積の半分以上が米軍基地となっているほか、上位10位までの市町村でも米軍基地は地域の面積の30％以上を占めている。

3．所有形態別状況

本県の米軍基地面積の所有形態別状況をみると、私有地が32.1％、市町村有地が29.9％、県有地が3.5％と、全体の約7割が民公有地となっており、国有地は約3割（34.5％である。これは、本土の米軍基地面積の約8割以上は国有地で、民公有地は２割弱に過ぎないのに比べ、大きな特徴であり、本土の米軍基地の大半が戦前の旧日本軍の基地をそのまま使用してきたのに対し、沖縄の米軍基地は、旧日本軍の使用地のほかに、かつての「土地闘争」にみられるように、米軍による民公有地の新規の強制接収が各地で行われた背景の違いを表している。

4．用途別使用状況

a. 本県の米軍基地の用途別状況をみると、「演習場」が施設数、面積とも最も多く、17施設・171,935ha（全基地面積の68.7％）となっている。この「演習場」施設には、県内最大の面積を有する「北部訓練場」をはじめ実弾射撃訓練に使用される「キャンプ・シュワーブ」や「キャンプ・ハンセン」、パラシュート降下訓練が行われる「読谷補助飛行場」、部隊の上陸訓練が行われる「金武ブルービーチ訓練場」「金武レッドビーチ訓練場」などのほか、南部地区や八重山地区（尖閣諸島）の離島に所在する射爆撃場等がある。なお、「演習場」施設の面積の95.3％（８施設）は北部地区に集中している。

b. 次に多いのが「倉庫」で、6施設・3,280.8ha（全基地面積の13.1％）を占めている。この施設には、各軍が必要とする弾薬の総合貯蔵・補給施設として重要な役割を果たしている「嘉手納弾薬庫地区」や「辺野古弾薬庫」のほか、在日米軍の中でも主要な兵站基地となっている「牧港補給地区」等があるが、「嘉手納弾薬庫地区」だけで「倉庫」施設の面積の約9割を占めている。

c. 三番目に面積が多いのが「飛行場」施設で、「嘉手納飛行場」と「普天間飛行場」の2施設・2,480.6haである。この両施設はいずれも中部地区に所在し、しかもそれぞれ空軍及び海兵隊の中枢基地となっている。

d. このほか、沖縄の米軍基地には、「キャンプ瑞慶覧」や「キャンプ・コートニー」等の「兵舎」施設が５施設・956.5ha、米国沿岸警備隊がロランC基地として使用している。「慶佐次通信所」や、「象の檻」と呼ばれる施設を有し、軍事通信の傍受をしていると言われている「楚辺次通信所」、陸軍特殊部隊（グリーンベレー）が配備されている「トリイ通信施設」等の「通信施設」が7施設・449.6ha所在する。

e. また、第7艦隊の兵站支援港で原子力潜水艦の寄港地としても重要な役割を果たしている「ホワイトビーチ地区」や、湾岸戦争の際の軍事物資の積み出し港として使用された「那覇港湾施設」等の「湾港」施設が3施設・218.5ha、軍病院が置かれている「医療」施設が1施設・108.3haとなっているほか、明確な用途区分ができない「奥間レストセンター」や「陸軍貯油施設」等の「その他」施設が3施設182haとなっている。

5．軍人軍属及び家族数

沖縄に配属された米軍人の数は、1972年の約39,000人を最高に88年まではほぼ32,000～34,000人台で推移していたが、89年になって30,435人となり、90年以降は27,000～29,00人のレベルを維持している。また、これら軍人軍属の家族数の推移をみると、人数が把握されている74年及び75年の約24,000人から減少し、76年以降83年までの8年間は約15,000人～18,000人のレベルを推移していたが、84年から再び20,000人台に復帰した後は、90年に約19,000人に減じたのを除き、現在まで20,000人レベルを維持している。

6．軍別状況

沖縄の米軍基地を軍別の菅理形態によって区分すると、海兵隊、空軍、海軍、陸軍となる。

(1) 海兵隊

海兵隊は施設数、施設面積とも大きく、20施設・18,970,5ha（全施設面積の75.8％）を占めており、軍人数も在沖米軍の総兵員数の61.4％が海兵隊員となっている。海兵隊は、沖縄駐留米軍の主力であり在日米軍の実戦部隊の中核である。米国の海兵遠征軍のうち海外では唯一沖縄だけに配備されているのが第3海兵遠征軍である。海兵遠征軍は海兵隊最大規模の上陸強襲機動部隊であり、これまでベトナム戦争や湾岸戦争、ソマリア作戦では先陣をきって闘った。

海兵隊は、具志川市にある「キャンプ・コートニー」に司令部をおく第3海兵遠征軍の下に、地上部隊の第3海兵遠征軍師団が同じく「キャンプ・コートニー」に、その第3海兵師団を航空支援する第1海兵航空団が「キャンプ瑞慶覧」に、また、これらの実戦部隊の後方支援部隊である第３遠征軍役務支援群が「特港補給地区」に置かれている。

なお、これらの上級司令部に所属する主な部隊として、第3海兵師団の下には第4海兵連隊（キャンプ・シュワーブ）及び第9海兵連隊（キャンプ・ハンセン）の2個歩兵連隊と、砲兵連隊として「キャンプ・ハンセン」において実弾射撃訓練を実施している第12海兵連隊が「キャンプ・瑞慶覧」に置かれている。第1海兵航空団の下の実戦部隊として「普天間飛行場」に第36海兵航空群、後方支援部隊として第17海兵航空団支援が「キャンプ瑞慶覧」に、第18海兵航空管制群が「普天間飛行場」に配備されている。

(2) 空軍

空軍基地は、10施設・2,145.6haで全基地面積の8.6％となっている。これに対し、軍人数は全兵力の27.1％と、約3分の1を占め、海兵隊と並び在沖米軍の主力となっている。空軍は、横田基地に司令部を置く第5空軍（戦術空軍）の指揮管理の下に、第18航空団が嘉手納飛行場に配置されている。その管轄下に、Ｆ－15戦闘機を有する3個の戦闘機中隊や空中警戒管制中隊1個、2個空中空輸中隊、2個戦術管制中隊及び1個空輸中隊等から成る「第18作戦群」をおくほか、軍事物資の補給・整備等の任務を有する「第18兵站群」並びに保安、通信、訓練支援及び設営等の任にあたる「第18支援群」、さらには「第18医療群」がおかれることとなった。

(3) 海軍

海軍は8施設・226.7ha（全基地面積の1.5％）を有し、軍人数は在沖全兵力の8.5％である。嘉手納飛行場の一角に「在沖艦隊活動司令部／嘉手納海軍航空施設隊」の本部があり、その傘下にP-3C対潜哨戒機を保有する第1哨戒航空団分遣隊が配置されている。同部隊は第7艦隊等の支援を行うほか、常時対潜哨戒や情報の収集及び偵察などを任務としている。そのほか、海軍の施設としては、「慶佐次通信所」、「楚辺通信所」、「泡瀬通信施設」等の通信施設や第7艦隊の兵站支援港としての「ホワイトビーチ地区」、尖閣諸島及び沖大東島の射爆撃場等がある。

(4) 陸軍

陸軍の基地は、4施設・386.9ha（全基地面積の1.5％）で、軍人数は全兵員数の3.0％である。陸軍は、「トリイ通信施設」に司令部（「第10地域支援群」）をおき、その下に運輸管理部隊（「那覇港湾施設」）、燃料供給部隊（「陸軍貯油施設」）等をおいているほか、軍事情報部隊及び特殊保安部隊が「トイリ通信施設」内に配置されている。

なお、陸軍特殊部隊（グリーンベレー）及び心理作戦部隊は1974年6月に米本国へ引き揚げたが、特殊部隊は84年3月に再び配置され、「読谷補助飛行場」を使用したパラシュート降下訓練等を行っている。

(5) 共用施設

以上の施設のほか、二以上の軍が共同で管理している基地が3施設・3,111.7haあり、「嘉手納弾薬庫地区」が空軍と海兵隊の、「キャンプ・シールズ」が空軍と海軍の、「ホワイトビーチ地区」が海軍と陸軍の共用施設となっている。

7．基地から派生する問題

(1) 航空機騒音

常駐機や米空母艦載機などの離着陸、エンジン調整、タッチ・アンド・ゴー訓練、ローリー演習（現地運用態勢訓練）、ヘリコプターの上空での旋回訓練等で基地周辺住民は厳しい騒音禍にさらされている。

(2) 県道104号線越え実弾射撃演習

県道104号線は、恩納村安富祖から金武町金武までを結ぶ全長8.3㎞で、そのうち約3.7㎞が提供施設内に位置する。演習の際は危険防止の観点から、弾道直下にある104号線の一部を封鎖して通行を禁止している。防衛施設庁は、1976年、周辺整備事業として、金武町、喜瀬武原から中川に至る全長5.061ｍの迂回道路を建設した。同演習は、月に１回、平均４日間のペースで行われている。演習は砲座を設定して、約４㎞離れて金武岳、ブート岳等恩納岳山系を着弾地とに行なわれる。演習においては、100mmび155mmりゅう弾砲を使用している。155mm砲の最大射程は30㎞で、キャンプ・ハンセンの規模（東西約13.5㎞、南北約4.2㎞）をはるかに上回り大変危険である。演習場周辺の民間地域では、これまで砲弾破片落下事故等が度々発生しており、付近住民は常に事故発生の危険にさらされている。同演習場周辺には２つの小学校があり、実弾演習により生ずる発射音、着弾音等により、児童生徒の集中力が散漫になるなど教育上の問題も多い。

(3) 原子力潜水艦等の寄港

勝連半島の先端に位置するホワイト・ビーチは、神奈川横須賀、長崎県佐世保とともに、原子力潜水艦等の寄港地である。地元勝連町では、原子力潜水艦の寄港の際の放射能漏れの不安が大きいことから、これまでにも、町議会を開催し「寄港反対」、早期出港及び万全の防止等を求める決議を採択している。1980年3月、ロングビーチ（巡洋艦）の寄港時に、通常の平均値を上回る放射能が検出され、当該地域及び周辺海域の魚貝類が売れなくなるなど、地域住民に大きな不安と被害を与えた。

(4) 赤土問題

赤土の流出による河川、海域の汚染は、景観の損失や自然環境の悪化を招き、産業の振興にも大きな影響を及ぼす。米軍施設、区域からの赤土流出、水域汚染がマスコミ等で取り上げられ、大きな問題となっている。

(5)PCB漏出事故

1991年4月作成された、米上院における太平洋基地視察報告書は、嘉手納基地の1箇所がPCBに汚染されていたと指摘した。嘉手納基地情報部もこの事実を認めた。他の調査によって、キャンプ瑞慶覧、普天間飛行場、キャンプ桑江、牧港補給地区、キャンプコートニー、キャンプハンセン、キャンプシュワーブ内の56カ所で野積みの状態で保管されていることが明らかになった。

(6) パラシュート降下訓練

沖縄でパラシュート訓練が実施されているのは、読谷補助飛行場と伊江島補助飛行場である。これまで、たびたび事故が発生し、そのほとんどが施設外落下であるが、1950年の燃料タンク落下による少女圧死、65年のトレーラー落下による少女圧死等悲惨な事故も発生した。その後も提供施設外の農耕地や民家等に落下する事故が起きており、地域住民生活に不安を与えている。

(7) 米軍機の民間空港使用

沖縄には、運輸省管理の那覇空港ほか、県管理の公共飛行場（第3種類空港）が11ヵ所あるが、これら米軍への提供施設にもなっていない飛行場にたびたび米軍機が着陸している。