現代文化学基礎演習2（2002年度：永井）

映像で見る占領期の日本

－占領軍撮影フィルムを見る－

マッカーサーの厚木到着と占領軍の日本進駐

1.受講者名簿

演習参加者名簿
氏名	回生	所属	氏名	回生	所属
飯田尚子	2	基礎現代文化学系	岩田華子	2	基礎現代文化学系
植弘将行	2	歴史基礎文化学系	梅本伸司	2	基礎現代文化学系
小河文乃	2	基礎現代文化学系	小野田剛太	2	基礎現代文化学系
片山知行	2	基礎現代文化学系	小窪陽子	2	行動環境文化学系
杉野築	2	基礎現代文化学系	鈴木由紀子	2	基礎現代文化学系
寺島達巳	2	行動環境文化学系	永井早紀	2	行動環境文化学系
西村　綾	2	行動環境文化学系	松坂和俊	2	基礎現代文化学系
森田次朗	2	行動環境文化学系	森岡純	2	基礎現代文化学系
山下裕子	2	歴史基礎文化学系	山本真奈美	2	基礎現代文化学
渡辺陽介	2	基礎現代文化学系
小野温子	3	現代史学専修	河中挙聡	3	現代史学専修
直江泰輝	3	現代史学専修	矢萩知佳	3	現代史学専修
伊藤彩	3	二十世紀学専修	川口夏織	3	二十世紀学専修
白川剛士	3	二十世紀学専修	山形拓史	3	二十世紀学専修
吉田恵美	3	二十世紀学専修	渡辺綾子	3	二十世紀学専修
長田　徹	4	二十世紀学専修

2.演習のテーマ

占領時代にアメリカ陸海空軍および連合国最高司令部通信隊が撮影した記録フィルムを見ながら、映像資料を通じて占領期の日本及び日米関係について学習する。

授業で見るフィルムはアメリカのNational Archivesに所蔵されていた記録映画を、エムティ出版がビデオに採録し全132巻からなる未公開秘蔵映像『終戦直後・占領下の映像記録』として出版したものの一部であり。占領期の日本を記録した映像としては、これほどの量がひとつにまとまったものは他にない。これを見ることで、占領期の日本を生々しい姿を実地に体験してみたい。また、現代史研究における映像資料の活用の方法を模索する。

今年度は1945年8月30日のした連合国最高司令官（SCAP）マッカーサーの厚木到着を中心に、占領軍の進駐状況を示す映像を見る。

マッカーサーの厚木到着のシーンは、降伏・占領期のことをあつかった記録写真集や記録映画・ビデオなどにも必ず収録される、有名な映像である。サングラスをかけたマッカーサーが愛機バターン号で厚木に着陸し、タラップから降りて、出迎えた部下と握手し、記者会見と写真撮影をすませたあと、用意された乗用車に乗って横浜に出発するまでの一連の場面を写したフィルムは、このビデオ集では以下の６本がある。それぞれ撮影者が異なり、カメラアングルがちがっている。そのために、この有名なシーンを多角的に観察できる。

マッカーサーの厚木到着のシーンを含むビデオ

第23巻の9、第34巻の6、第52巻の3、第60巻の6、第61巻の1、第62巻の1

3.機材運搬の担当

月日	4月24日	5月1日	5月8日	5月15日	5月22日	5月29日	6月5日	6月12日	6月19日
担当	梅本、白川	梅本、白川	山本、杉野	矢萩、吉田	山下、小川	森岡、森田	飯田、渡辺（陽）	岩田、西村	小野田、片山
	6月26日	7月3日
	小野、伊藤	寺島、長田

・授業の始まる前に１F事務室で台車、１F教務掛でビデオデッキとプロジェクターを借りる。
・エレベーターで８Fまであがって、現代文化学研究室でスクリーンと電源コードなどを借りる。
・２階の演習室に運び、ビデオ、プロジェクター、スクリーンのセッティングをおこなう。

4.要調査項目と調査分担

１．人物の特定

厚木到着のフィルムに写っている人物が誰かを調べる。
　特定方法…当時の新聞記事から重要人物をピックアップする。
　調べるべき新聞は、三大紙（朝日、読売、毎日）と英字紙（京大で利用できる英字新聞）
　担当者　朝日新聞：西村　読売新聞：渡辺（陽）　毎日新聞：小河　英字紙：飯田

5月29日の新聞記事の調査により、新たに映像上の人物が特定された。

ロバート・アイケルバーガー中将（アメリカ第8軍司令官）、マッカーサーと最初に握手した人物。マッカーサーと同じ軍服を着て、襟に星三つ（階級は中将）。マッカーサーよりも早く厚木に到着し、日本側の代表と話しをする。

ジョセフ・スイング少将（第11空挺師団長）、濃い色の戦闘服を着用し、襟章は星二つ。11A/Bと記されたヘルメットを着用（11A/BはThe 11th Airborne Divisionの略語）。マッカーサーよりも早く到着。日本側と交渉。

6月5日、12日の新聞記事の調査により、さらに次の人物が映像上で特定された。

有末精三中将（終戦連絡事務局神奈川委員長：日本側代表）、先に到着したアイケルバーガー及びスイングと滑走路の側で話し合っている日本陸軍の制服を着た人物。襟の階級章から陸軍中将であることがわかる。

また、6月26日の有末精三の回想録についての報告により、有末がアイケルバーガー、スイングと協議した際に有末の左手に立っていた眼鏡をかけた人物は大竹貞雄陸軍少尉であることがわかった。

サザランド参謀長、バターン号でマッカーサーとともに到着した人物。記念写真をとる際にマッカーサーのすぐ左に立っていた人物で、襟章は星三つ（階級は中将）

マッカーサーの厚木到着以前、スイング少将が先に到着した際の映像も収録されていることがわかった。

この時スイング少将を出迎えた略帽の人物は先遣隊のテンチ大佐であると思われる。

新聞記事と映像から、さらにケニー大将、スパーツ大将と思われる人物が特定された（襟章に星４つ）

２．人物の残した記録の調査

人物がわかれば、その人物が残した回想録、自伝、手紙などの記録を調べて、日本進駐時のことについて記述がないか調べる。

まず人物名が判明しているマッカーサーについて調べる。担当者　マッカーサー回想録：杉野

次に、有末精三の回想録を調査する（6月5日担当決定）：森岡　

6月12日の杉野報告により、マッカーサーの部下のホイットニー（Whitney）が回想録を残していることがわかった。ホイットニー回想録の調査担当（6月12日決定）：梅本

6月19日の矢萩報告により、アイケルバーガーが回想録及び日記を残していることが判明した。その調査担当：吉田（6月19日決定）

日本側の当事者の回想が収録されていないか、『昭和史の天皇』（読売新聞社）を調査する：植弘

3．人物の伝記的事実の調査

人物名がわかれば、その人物の経歴、ポジション、功績などの伝記的事実（とくに第二次世界大戦中および戦後期において日本とどのような関係にあったのか）を調べる。

まず手始めに、マッカーサーについて調査する。
　担当者　マッカーサー伝記：岩田　

アイケルバーガーの調査担当：矢萩

スイング少将および第11空挺師団の調査担当：直江（6月12日決定）

サザランド参謀長についての調査担当：小野（6月12日決定）

ケニー大将ついての調査：長田（7月3日決定）

スパーツ大将についての調査：川口（7月3日決定）

大竹貞雄少尉についての調査：山本（7月3日決定）

6月26日の報告により日本側の受入機関の副委員長は鎌田銓一中将であることがわかった。鎌田についての調査：小野田（7月3日決定）

アメリカ人以外にもこの日、厚木に到着した人物はいた。そのことは映像から明らか（米軍のそれとは異なる制服を着た人物が映像に映っている）。それらの人物も調べる必要があるが、今のところ新聞の記事等からは人物が特定できない。調査担当（6月12日決定）：山下

4.その他の調査事項

アメリカ占領軍（マッカーサー司令部）の公式記録（戦史：マッカーサーレポート）を調査する。担当：伊藤（6月19日決定）　

マッカーサーの厚木到着に関する日本側の公式記録を調査する。具体的には『終戦史録』『占領史録』などの外務省資料を調査する。担当：森田（7月3日決定）

米軍先遣隊が到着が間近に控えた23日頃まで厚木基地の海軍部隊は降伏に反対していた。厚木での海軍の反乱について調査する。担当：片山（7月3日決定）

映像の舞台となった厚木飛行場・厚木基地について、その歴史、位置、規模、設備などについて調べる。厚木飛行場の地図。担当：鈴木（7月3日決定）

5.見ることのできる映像

ビデオに収録されている映像

１．マッカーサーの厚木到着

1945年8月30日にマッカーサーがバターン号で厚木に到着し、出迎えの人々と挨拶し、記念写真を撮影し、記者会見したあと、用意された自動車に乗り込んで横浜に向けて出発するまで。なお、マッカーサーの到着に先立って、先着したアイケルバーガー中将、スイング少将と日本側の有末中将以下との間の折衝の映像も含まれる。この映像はカメラ・アングルが少しちがうだけで、ほとんど同じ内容のものが７種類残っている。

第23巻9、第34巻6、第52巻3、第61巻1、第62巻2、第84巻2、同3、第110巻5、第120巻7

第23巻9はマッカーサー到着の模様をバターン号の後ろから撮影したもの、音声入り。これでマッカーサーが軍楽隊の演奏で出迎えられたことがわかる。

第120巻7はマッカーサー到着を彼の左側面から写している。アイケルバーガーとの握手のシーンがよくわかる。マッカーサーの右手後方すぐ近くにカメラを構える日本人のカメラマンが写っている。マッカーサーの後ろにホイットニーらしき人物がチラリと顔を出す。バターン号の前を離れたマッカーサーは厚木の格納庫前で演奏する軍楽隊の演奏を聴き、指揮者と握手する。横浜に向かう車に乗る前にケニー大将、スパーツ大将とならんで記念撮影をするシーンも写っている。

2.マニラあるいは沖縄を出発するマッカーサー

第60巻6は、バターン号の機首に書かれたロゴと絵の大写しからはじまる。映像では、マッカーサーは車で到着して、これからバターン号に乗り込もうとしている。そのことからこの映像は厚木到着時のものではなく、厚木に向けて出発しようとするところを写したものであることがわかる。マニラまたは沖縄の飛行場での撮影であろう。

3.厚木に到着する第11空挺師団長スイング少将の映像

マッカーサーより先に厚木に到着したスイング少将の映像も残っている（第52巻3）。ヘルメットをかぶり、戦闘服を着たスイング少将を出迎えた略帽の人物は先遣隊のテンチ大佐だと思われる。

6.調査報告

5月29日

小河文乃：『毎日新聞』（8月20日～31日）から得られた情報

8月19日

日本、河邊虎四郎（陸軍中将）をマニラに派遣。
交渉に当たったのはリチャード・スーザランド参謀長。

8月21日

連合国情報局・大本営帝国政府の発表
〈連合国軍第一次部隊の行動予定〉
8月25日　本土上空に飛行開始
8月26日　厚木に空輸先導部隊到着
8月28日　兵力の進駐開始
〈日本の動き〉
1.千葉県鴨川東岸、多摩川河口、府中、八王子、大月、伊豆半島南端を結ぶラインの内側にいる日本軍は退去する。かわりに警察が治安維持を行う。
2.連合国との接触は別に設置する機関が行う。
3.進駐地域の住民、官公庁は平常どおりにしていること。

8月24日

日本に「終戦連絡事務局」が連合国側の指示で設置される。

8月26日

政府情報局「連合軍の進駐を前にして」と題する放送を国民に行う。
連合国司令部の発表
〈報道陣について〉
日本の新聞記者、写真班、ニュース映画班は厚木、横須賀に各10名づつ置くこと。
〈マッカーサーのこと〉
8月27日朝までに沖縄入り。Ｒ．アイケルバーガー（第8軍司令官）が同行

8月27日

台風がやってくる
大本営帝国政府の発表
〈連合国軍到着の延期〉
8月28日　先遣部隊、厚木到着
8月30日　マッカーサーと連合国軍、厚木到着
終戦連絡事務局の発表
　長官に岡崎勝男（外務省調査局長）が就任

8月28日

先遣部隊、厚木到着
〈うちわけ〉
士官将校　３０名　　下士官　120名　Ｃ47機、57機などの計48機で到着
連合国軍幹部
　　　　　　　Ｃ．Ｔ．テンチ大佐（先遣部隊司令官）
　　　　　　　ウェアバートン大佐（第5航空隊司令官代理・空輸司令官）
　　　　　　　ハッチンソン大佐、ダン大佐（Ｇ４補給部隊）
　　　　　　　アウキンクロス大佐、ブライアン大佐（通信隊）
　　　　　　　ブラワーズ大佐（通訳）
日本側幹部
　　　　　　　有末中将（終戦連絡事務局神奈川委員長）
　　　　　　　鎌田少将、山澄大佐（海軍）
　　　　　　　鶴見調査官（外務省）
〈目的〉
マッカーサー到着の事前打ち合わせと現地チェック

8月30日

7:00　各国記者団120名、沖縄より厚木入り

西村　綾：『朝日新聞』（1945年8月31日付）から得られた情報

マッカーサーの厚木到着の模様を詳しく報道した記事を発見

1945年8月31日付『朝日新聞』（縮刷版）の記事より　　　　　　　　　　　　

搭乗機はバターン号
　連合軍最高指揮官マッカーサー元帥は３０日午後２時５分、本土進駐連合第一陣を率いて厚木飛行場に到着した。
　３０日午前、マッカーサーに先立ち主力と共に本土に乗り込んだ米第８軍司令官ロバート・アイケルバーガー中将および米第１１空挺師団指揮官ジョゼフ・スウィング少将以下米側幹部並びに日米記者団が飛行場の西方滑走路に設けられた天幕の前でマッカーサーの到着を待つ。南の風が強い。アイケルバーガー中将は60歳位であろうか、頬からあごにかけて深いしわがある。スウィング少将はやや若く空挺隊員の青い制服を身に着け同じく青色の深い鉄兜をかぶっているが、ひどく古びている。関東地区第一次占領地区の最高司令官にアイケルバーガー中将が当たりその下にスウィングが特殊任務を帯びて行動するものと解される。
　２時過ぎ、東の空に銀色の巨鯨が姿を現した。やはりＣ５４である。１時５分、機は中央滑走路を北から南に着陸した。機首のところに緑色で「バターン」と書いてある。マッカーサー機だ。　「バターン」：これはマッカーサー元帥にとりまことに忘れ難い名前であろう。
　ややしばらくして星の標識の入った巨鯨の胴ッ腹から銀色の梯子が下ろされた。扉が開いた。一同固唾を呑む。やがてマッカーサー元帥が現れた。薄い上着なしのカーキー服に黒眼鏡、それに大きな竹製のパイプ、南方生活の長い彼としては割合に日焼けせぬうす赤い頬をしている。６６歳にしては若い。梯子を下りる前扉のところでややしばらくたたずみ、左右に目を配って写真班のためにポーズを作る。やがて梯子を下りて飛行場の夏草の上に立った。大男である。６尺１・２寸はあろうか、アイケルバーガーが進み出た。
　「ハローボッブ」マッカーサーの声は低く力がある。スィングも握手を求める。「閣下、豪州でお目にかかった私です。御記憶ですか。」豪州の従軍記者が、「閣下、何か記者団に声明を、」と促せば、「メルボルンから東京まで、思えば長かった。」
　マッカーサーの第一声は簡単明瞭だった。機の側を離れた彼は再びカメラの斉射を受けた。彼の左側に立ったのは例のアイケルバーガー中将、右側に並んだのはマッカーサーに随行してきた参謀長サザーランド中将（彼はマニラ会談にも出席している）。その次にマッカーサー司令部の通信隊司令エイケン少将、一人置いてスウィング少将といった順序。
　カメラマンの包囲が解けるやマッカーサーは第１１空挺師団の前に進み出て簡単な挨拶の後「米スペシャル」と書いた乗用車に収まった。
　車の跡に従って２号車に入ったのは星４つの将官２人：米太平洋戦略隊司令スパーツ大将と米極東航空隊司令ケニー大将である。かくて一行は乗用車２５台トラック１０台に分乗して戸塚経由、横浜に向かった。

注釈

６尺１・２寸：約183ｃｍ
バターン：マッカーサーが日本軍に敗北した半島の名前

★特定できた人物

米第８軍司令官ロバート・アイケルバーガー中将（マッカーサーを出迎え最初に握手した人物）
　米第１１空挺師団指揮官ジョゼフ・スウィング少将（下のようなヘルメットをかぶっていた人物）

←The 11th Air(空) Borne（挺）

6月12日

杉野　築：マッカーサーの「回想録」から、厚木到着の場面

マッカーサーの回想より、厚木到着時

MacArtur,Douglas.Reminiscences, McGraw-Hill(New York), 1964
－京都大学経済学部上野文庫所蔵
（邦訳）『マッカーサー回想記』上・下（津島一夫訳、朝日新聞社、1964年）
－京都大学総合人間学部書庫所蔵

Reminiscences, pp.269-271より

Atsugi was a training base for Kamikaze pilots, and numbers of them were living in its vicinity. Many of these suicide pilots refused to surrender. They mutinied and invaded the palace grounds in protest of the Emperor’s broadcast announcing the Japanese capitulation. They killed the commanding general of the Imperial Guard Division and fired on the house of Prime Minister Kantaro Suzuki before being subdued. The Japanese delegation were fearful of my landing in such an atmosphere of violence.

My staff was unutterably opposed to my projected landing. They called it a gamble. They argued that on the Kanto plain of Tokyo alone twenty-two Japanese Divisions, 300,000 well-trained fighting soldiers, remained, while numbers of well-armed troops were stationed across the enemy’s homeland. For the supreme commander, a handful of his staff, and a small advance party to land unarmed and unescorted where they would be outnumbered by thousands to one was foolhardy. But years of overseas duty had schooled me well in the lessons of the Orient and, what was probably more important, had taught the Far East that I was its friend.

Small advance parties were flown in to Atsugi, and on the morning of August 30th, General Eichelberger arrived to direct the landing operations.

At two o’clock in the afternoon my C-54, Bataan emblazoned on its nose, soared above Kamakura’s giant bronze Buddha, past beautiful Mt. Fuji, and swung down toward Atsugi. General Whitney, who was acting as my military secretary, recorded his feelings of the moment:

We circled the field at little more than treetop height, and as I looked out at the field and the flat stretches of Kanto Plain, I could see numerous anti-aircraft emplacements. It was difficult not to let my mind dwell on Japan’s recent performances. The war had been started without a formal declaration; nearly everywhere Japanese soldiers had refused to give up until killed; the usual laws of war had not been complied with; deadly traps had frequently been set. Here was the greatest opportunity for a final and climatic act. The anti-aircraft guns could not possibly miss at this range. Had death, the insatiable monster of the battle, passed MacArtur by on a thousand fields only to murder him at the end? I held my breath. I think the whole world was holding its breath. But as usual, he had been right. He knew the Orient. He knew the basic Japanese character too well to have thus gambled blindly with death. He knew and trusted that national spirit of traditional chivalry called “Bushido.”

The plane nestled down on the field and MacArtur, his corncob pipe in his mouth, got out. He paused for a second or two to look about him. The sky was a bright blue, splotched with patches of fleecy clouds. The sun beating down on the airfield made the concrete runways and apron shimmer with the heat. There were several other United States planes on the field, and the few armed Allied troops in the area seemed a frighteningly small force. A handful of officers waited to greet him. The senior was General Eichelberger who strode forward to meet MacArthur. They shook hands and MacArtur said in a quiet voice: “Bob, from Melbourne to Tokyo is a long way, but this seems to be the end of the road. ”

* vicinity:近隣　　mutiny:反乱を起こす　　 capitulation:降伏　　 delegation:代表団　
station:配置する　　 foolhardy:無謀な　　 emblazon:描く　　 soar:空を飛ぶ　
emplacement:砲陣地　　 insatiable:貪欲な　　 chivalry:騎士道　　 shimmer:ゆらめく

『マッカーサー回想記』下,、p.106～108より

厚木は神風隊の飛行士たちの訓練基地で、この精鋭部隊の隊員たちが飛行場やその周辺に宿営していた。この決死隊員たちの多くは降伏を拒んで反乱を起こし、天皇が日本降服の詔勅を録音したレコードを捜して皇居内に乱入し、鎮圧されるまでに近衛師団長を殺し、首相鈴木貫太郎氏の邸宅に火をつけた。日本側はこのような荒れ狂ったふんいきの中へ私が着陸することに、非常な不安を感じていた。

　幕僚たちも、私がこのような着陸をおこなうことに、真正面から反対していた。それはバクチだというのだ。最高司令官が丸腰で、ひとにぎりほどの幕僚とわずかな先遣隊以外にはろくな護衛もなく、相手側が何千人というのに、こちら側はたった一人という劣勢な姿で着陸することになる。相手は大勢の敵兵がまだ完全武装で待ちかまえている敵国であり、関東平野だけでも日本軍二十二個師団、三十万以上の優秀な戦闘部隊がいる、というのが彼らのいい分だった。

　しかし、私は多年の外地勤務で極東についての教訓を学んでいた。もっと重要なことは、極東もまた私の外地勤務から極東の友である私のことを教えられていたのだ。

　小さな先遣隊がまず厚木に送り込まれ、八月三十日の早朝にはアイケルバーガー将軍が現地に着いてみずから指揮をとり、私の到着の準備を進めた。

　その日の午後二時、機の鼻先に｢バターン｣と書いた私のＣ５４型機は、鎌倉の大仏を越え、美しい富士山を飛び過ぎて、厚木へ向きをかえた。当時私の軍事秘書官をつとめていたホィットニー将軍は、その時の印象を次のように描いている。

「われわれは木立すれすれの高度で飛行場を旋回した。飛行場と、平たんな関東平野のひろがりを見渡した時、多数の高射砲陣地が目についた。私は最近までの日本の行為について、考え込まざるを得なかった。戦争は宣戦布告なしにはじめられ、ほとんど至るところで日本兵は死ぬまで戦いをやめなかった。日本軍は通常の戦争法規を守らず、しばしば恐るべきワナをしかけた。いまこそ、最後のドタン場のひと仕事をやってのける最大の機会が訪れたわけだ。
　この距離では、高射砲がはずれることはあり得ない。どんよくな戦場の怪物、死は無数の戦場でマッカーサーを見のがしたあげく，けっきょくおしまいに彼を殺してしまうのだろうか。私は息をのんだ。全世界が息をのんでいたに違いない。しかし、いつものように、マッカーサーは正しかった。彼は東洋を知り、日本人の基本的な性格をあまりにもよく知っていたから、死を相手にそのようなめくらバクチを打つはずはなかった。彼は日本が国家的に持っている、あの『武士道』と呼ばれる伝統的な騎士道の精神を知り、また信じていた。
　機は飛行場にすべり込み、マッカーサーはコーン・パイプを口にくわえて、機から降り立った。彼はちょっと立ちどまって、あたりを見回した。空は青く輝き、羊毛のようなちぎれ雲が点々と浮かんでいた。飛行場に照りつける日でコンクリートの滑走路とエプロン(格納庫前の舗装場所)にはかげろうがゆらいでいた。飛行場には他に数機の米機があったが、そこにいるわずかな数の武装した連合国兵士はおそろしく心細い兵力にみえた。
　最先任者はアイケルバーガー将軍で、進み出て、マッカーサーを迎えた。二人は握手をかわし、マッカーサーはおだやかな声で『ボブ、メルボルンから東京までは長い道だったが、どうやらこれで行きついたようだね。これが映画でいう“結末”だよ』といった。

この文章からわかること

(1)厚木が神風隊の訓練基地であったこと
(2)マッカーサーの、少数部隊のみを連れての厚木上陸は、非常に大胆な行動であったこと
(3)マッカーサーと握手していた人物がアイケルバーガー将軍であるということ

Reminiscencesについて

　この回想記は、マッカーサー自身が、自分の全生涯やその中で起こった様々な出来事についての記録や思い出、主張を記したものであり、彼の死の前年(1963年)にその原稿が完成した。彼は回想記の序文で、「この回想記は歴史ではなく、自叙伝でもなく、また日記でもない。しかし、その全部を少しずつ兼ねている。(中略)批評は私自身のもので、ここで扱われている問題について他の人々が同じ見方をしているか否かにはおかまいなく、私自身がそれをどう見ているかを示すものである」と述べている。

6月26日

梅本伸司：『マッカーサー回想記』に引用されたコートニー・ホイットニーの著作について

Courtney　Whitney　MacArthur：HIS　RANDEZVOUS　WITH　HISTORY
　　　京都大学経済学部図書館蔵　上野文庫

本書は　マッカーサー元帥の補佐役で腹心であったコートニー・ホイットニー将軍による1941年から1953年までのマッカーサー元帥の記録である。‘World War’‘Japan’‘Korea’‘America’の四章からなり　それぞれ第二次大戦　日本占領　朝鮮戦争　米国帰国後と時間に沿って出来事が書かれている。

当該の‘Japan’の章はバターン号による厚木基地到着に始まり、日本の民主化・非軍事化を進める過程を書いている。また　‘Economic’‘Religion’‘Education’‘Health’‘Land Reform’‘Expiation’‘The Emperor’‘The Press’‘The Police’‘Women’といった大まかな分類のもとに、戦前・中期の日本の状況とマッカーサー元帥の考え、改革の方針について書かれており、アメリカによる占領政策がどのようになされたかを知るのにも良い資料であるといえる。

以下厚木到着の部分について、簡単に解説する。
原書ｐ.212　
ｌ.11　　　　マニラでの会議に際して　伊江島に上陸することのrecognition letters（管制との交信の際使用）にBATAANの文字を使う。
ｌ.22　　　　米軍の厚木到着に備え　厚木飛行場の修復・東京湾付近からの軍の移動・全ての飛行機のプロペラを外すことを日本側に要求。
　　　　　　横浜までの移動手段と　横浜での宿泊施設は日本側から提供される　という記述。

ｐ.213
ｌ.25　　　　厚木到着直前の機上でマッカーサーが口にした　日本改革の内容。

ｐ.214
ｌ.24　　　　マッカーサーがバターン号に乗って厚木基地に到着する場面の記述。マッカーサー回想記に引用された部分。引用にあたり付け加えられた部分や　省略された部分があることがわかる。

ｐ.215
ｌ.13　　　　横浜に向かうのに使われた自動車についての記述。かなりの年代ものだったと強調している。当時の日本の状況がうかがえる。
ｌ.25　　　　米軍についた日本側の護衛が厳重なことに　逆に筆者は不安を抱いている。
ｌ.32　　　　米軍高官の宿泊するニューグランドホテルに関する記述。

ｐ.216
ｌ.3　　　　食事に毒が入っている可能性を指摘する筆者とそれに対するマッカーサー元帥の言葉。
ｌ.10　　　　食料調達の際　日本の食糧事情が逼迫していることを知り　現地調達を行わない方針をたてたという記述。　

以上が　マッカーサー元帥の厚木到着に関して　ホイットニー将軍が本書において記述した部分である。また後の文で　日本人のアメリカ人に対する印象の例として外交官である加瀬俊一の回想録が引用されている。

考察

最も近い場所でマッカーサーの言動を見聞きしていた筆者の　マッカーサーについての生き生きとした描写が見られる。反面　マッカーサーの慈悲にあふれる対応や　業績といったものを必要以上に強調しているところがあるようにも感じられた。

補足

また　マッカーサー著“Reminiscences”（邦題：マッカーサー回想記）に引用された部分と比較してみると　本文をわずかにではあるが修正して引用していることが見て取れる。

バターン号で厚木飛行場を旋回している時のホイットニー将軍の心境を述べた部分
本文：I held my breath　
↓
回想記：I held my breath. I think the whole world was holding its breath

マッカーサーを出迎えた将軍たちについての記述とその時のマッカーサーの言葉

本文：The senior officer was Lieutenant General Robert Eichelberger, Commander of the Advance Occupation Force ( he had asked MacArthur to give two days to make sure that The area was secure; MacArthur had given him two hours ). Eichelberger now strode forward to meet MacArthur at the bottom of the steps. They shook hands and MacArtur said in a quiet voice: “Bob, this seems to be the end of the road. As they say in the movies, this is the‘pay-off.’”
　↓
回想記：The senior was General Eichelberger who strode forward to meet MacArthur. They shook hands and MacArtur said in a quiet voice: “Bob, from Melbourne to Tokyo is a long way, but this seems to be the end of the road. ”

現代文化学基礎演習2（2002年度：永井）

映像で見る占領期の日本

－占領軍撮影フィルムを見る－

マッカーサーの厚木到着と占領軍の日本進駐

1.受講者名簿

2.演習のテーマ

マッカーサーの厚木到着のシーンを含むビデオ

3.機材運搬の担当

4.要調査項目と調査分担

１．人物の特定

２．人物の残した記録の調査

3．人物の伝記的事実の調査

4.その他の調査事項

5.見ることのできる映像

１．マッカーサーの厚木到着

2.マニラあるいは沖縄を出発するマッカーサー

3.厚木に到着する第11空挺師団長スイング少将の映像

6.調査報告

5月29日

小河文乃：『毎日新聞』（8月20日～31日）から得られた情報

8月19日

8月21日

8月24日

8月26日

8月27日

8月28日

8月30日

西村 綾：『朝日新聞』（1945年8月31日付）から得られた情報

1945年8月31日付『朝日新聞』（縮刷版）の記事より

注釈

★特定できた人物

6月12日

杉野 築：マッカーサーの「回想録」から、厚木到着の場面

マッカーサーの回想より、厚木到着時

Reminiscences, pp.269-271より

『マッカーサー回想記』下,、p.106～108より

この文章からわかること

Reminiscencesについて

6月26日

梅本伸司：『マッカーサー回想記』に引用されたコートニー・ホイットニーの著作について

考察

補足

西村　綾：『朝日新聞』（1945年8月31日付）から得られた情報

1945年8月31日付『朝日新聞』（縮刷版）の記事より　　　　　　　　　　　　

杉野　築：マッカーサーの「回想録」から、厚木到着の場面