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現代文化学基礎演習II（2004年度前期：永井）

新書で読む現代世界・現代文化

伊豫谷登士翁『グローバリゼーションとは何か　液状化する世界を読み解く』平凡社新書、2002年

担当者：堀内亜紀、三木宜子、西田純子、川崎春菜

司会：前田高志ニコラス

記録者：岸谷貴之、高尾正道

堀内の報告（書物の内容紹介）

▽21世紀のグローバリゼーション研究

「グローバリゼーション」という語は政治、社会、文化など、諸分野にまたがり多面的に使用されている言葉であるが、研究のためには2つの柱を設定することができる。すなわち、

(1)政治経済的グローバリゼーションと、大衆文化の浸透などの文化的グローバリゼーションとの対話、

(2)ナショナルな思考様式（つまり「国民国家」という意識）からの脱却である。

近代という時代には、「一体化」と「差異化」の二面性がある。情報･交通の発達などによる国境などの既存の境界がゆらぎ（一体化）、同時に新たな境界の設定による区分化（差異化）が進んだのである。

グローバリゼーションという語自体は1980-90年代に一般化したが、この視点から見ると、近代にもグローバリゼーションが存在したともいえる。従って、グローバリゼーションの進展が国民国家の消滅を意味するのでは決してない。むしろ、それまで主権国家のみが主体であった国際政治に、民間企業や多国籍企業などの新たな主体が台頭することを意味するのである。ダボス会議がその好例である。

▽グローバリゼーションのタイムスパン

グローバリゼーションへの移行期は1960年代から90年代である。輸送･通信技術の発達によって企業活動が変化した。60年代以降、それまでの貿易に代わって、在外生産が拡大したのである。

近代世界統合化の転機は60年代末から70年代初めにある。すなわち、ブレトン＝ウッズ体制の崩壊や、オイルショックによって経済の全面的な統合が起こったのである。

グローバリゼーションの具体的な場の一例としては世界都市＝グローバル・シティが挙げられる。

グローバリゼーションが原因たる新たな問題として、「新しいレイシズム」がある。60年代から顕著になった、白人・黒人間の経済格差の広がりと、分離の増大や、ナショナリズムの向上などである。もとよりナショナリズムとグローバリズムは表裏一体であった。というのも「ナショナル」な境界の設定があって初めて「グローバル」という概念が成立するからである。

▽世界経済の再編

70年代以降、直接投資への移行が進んだ。発展途上国政府が、外国企業の子会社を積極的に誘致するため、「輸出加工区」を設けたのからである。

また、労働市場にも変化が起こった。労働力の不足は、先進国企業の生産拠点の海外移転や、逆に途上国からの移民労働者の大量流入の原因となった。これは、国家保護による経済から、グローバリゼーション、すなわち市場の柔軟化へと進展したことを意味する。

グローバリゼーションの進展により、個々人の生活レベルでも変化が起こっている。家族や共同体などの、従来のローカルな関係の崩壊が進んでいる一方、映画、テレビ、ビデオ、音楽などの情報商品が、グローバル娯楽として世界規模で浸透するようになった。

さらには、国外からの安い労働力の流入が先進国の雇用問題を生み、福祉の崩壊を招く懸念もある。そのため、排除によって新しい貧困問題も生まれている。

生命の再生産の市場化という事態も起こっている。生命の再生産とは、医療･教育･衛生などのサービスや、家庭における家事などのことをいう。特に家庭における家事など、従来無償であった分野にまで（家政婦の使用など）市場化がすすみ、それに伴い女性移民の増加が見られる。

以上のような変化や、不安定な雇用が原因となって、偏狭なナショナリズムに基づく反グローバリズムの考えが生まれてきている。

三木のコメント

１．グローバリゼーション

…具体的には

越境的サービス
自由競争

世界性（近代世界システム論など）⇔普遍性（共通したもの）

※しかし、普遍とは西洋そのものに他ならない。即ち、世界は西洋のようになるべきと受け取られる。そして、現在この「西洋」にあたるのはアメリカである。実際、全世界の資本の４分の１以上、貿易の７割以上を占める多国籍企業の大部分はアメリカ資本であり、それはアメリカの権力により指導される。故に、反グローバリズムが反米に結びつく。

２．ナショナリズム

…グローバリゼーションに対抗する思想として表出

国家（単一の帰属）←ナショナルアイデンティティーが過度に強調されると問題

３．反グローバリズム　

グローバリズムの問題点…越境的サービスが巨大化し、自由競争が行き過ぎると、デジタルディバイドなどの経済格差が発生する。そして、「負け組み」は、努力がたりなかったかのように思われてしまう。グローバリゼーションを進める人々は同じ価値観を共有しているが、それら以外の人々は同じ共同体を形成し得ない（新たなレイシズム）。

発言者曰く「平等よりも競争が重視され、弱者に対する思いやりが欠如しているのではないか。超国家的なグローバリゼーションよりも、主権国家を前提とするインターナショナリズムが良いのではないか。」

西田のコメント

文化的グローバリゼーションについて

筆者はグローバリゼーション文化に反対しているが、それについては賛成である。

グローバル文化の例として、USJ、スターバックス、ベッカムヘア、途上国への日本文化の影響等が挙げられる。これらグローバリゼーション文化は、たとえばUSJが宝塚ファミリーランドの敗北を象徴するように、郷土愛、nationalismの喪失を意味する。これは非常に悲しいことである。

グローバリゼーションによる世界文化の均質化には、2つの問題点がある。一つには感情面での悲しみであり、一つには、「異質な中で高めあう」ことがなくなることである。

筆者はナショナリズムに陥ることなく、グローバリズムに反対することを唱えている。というのも、ナショナリズムは偏狭、他者排除を意味するからである。しかし、少なくとも文化面ではナショナリズムは必要ではないだろうか。

川崎のコメント

グローバリズムが進むと階層が分化し、地域ではなく階層による価値観の共有が起こる。

グローバリズムに楽観的→それに恩恵を被る人々
グローバリズムに反対→それに不利益を被る人々→ナショナリズムへ

文化…相互に関係しあうもの。偏狭的ナショナリズムに陥ることなく、違いを大切にしたい。

記録者の注：報告後の質疑応答、討論の記録は省略します（岸谷）

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伊豫谷登士翁『グローバリゼーションとは何か 液状化する世界を読み解く』平凡社新書、2002年

堀内の報告（書物の内容紹介）

▽21世紀のグローバリゼーション研究

▽グローバリゼーションのタイムスパン

▽世界経済の再編

三木のコメント

１．グローバリゼーション

２．ナショナリズム

３．反グローバリズム

西田のコメント

文化的グローバリゼーションについて

川崎のコメント

伊豫谷登士翁『グローバリゼーションとは何か　液状化する世界を読み解く』平凡社新書、2002年

３．反グローバリズム　