映像で見る占領期の日本

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ミズーリ号艦上の降伏調印式の参列者（連合国側）

最終更新：2002年5月31日

マッカーサーについて

Douglas A．MacArthur（1880-1964）

1880（明治13）年1月26日生
アーカンソー州リトル・ロック出身
父　アーサー・マッカーサー・ジュニア＝南北戦争で活躍した軍人
母　メアリー・マッカーサー

太平洋戦争とマッカーサー（1945年9月末まで）

1941（昭和16）年	7月26日	アメリカ陸軍に少将として復帰。
	7月27日	中将に昇進すると同時に米国極東陸軍司令官に就任。
	12月8日	太平洋戦争開戦。
1942（昭和17）年	3月11日	日本軍が迫ったため、フランクリン・ルーズヴェルト大統領の命令で、家族と共にコレヒドール島を魚雷艇で脱出。この地におけるその後の指揮はウェインライト将軍が引き継いだ。
	3月17日	オーストラリアに到着→“Ｉ shall return.”
	4月19日	連合国南西太平洋方面司令官就任。
	6月3日	ミッドウェー海戦で勝利をおさめる。
	7月以降	ニューギニアにおいて日本軍と交戦開始。
	8月	ガダルカナル島上陸。
1943（昭和18）年		南西太平洋地域で日本軍と交戦
1944（昭和19）年	7月	ハワイでフランクリン・ルーズヴェルト大統領、チェスター・ニミッツ提督と会談⇒太平洋をニミッツとで2つに分け、マッカーサーはフィリピンを攻める方向で合意。
	8月	ニューギニア戦終結。
	10月	レイテ島海戦、レイテ島上陸、フィリピン解放を宣言→“Ｉhave returned．”
	12月12日	ミンドロ島占領。
1945（昭和20）年	1月	陸軍元帥に昇進。
	8月13日	連合国最高司令官（SCAP）兼米極東軍最高司令官（CINCFE）に就任、
	8月15日	停戦。
	8月30日	厚木飛行場に到着。
	9月2日	日本降伏文書に調印→調印式に出席。
	9月27日	アメリカ大使館で昭和天皇と会見。

降伏調印式当日のマッカーサー

9月2日降伏文書調印式の当日。その日は未明に雨が降った事もあり、最高気温23.3℃、平均気温20.3℃という、夏とは思えないような過ごしやすい気候だったという。マッカーサーと日本全権、共に無事ミズーリ号へ乗船し、午前9時に調印式が始まる。

最初2、3分のマッカーサーの演説。終了後、日本側から重光次いで梅津、そしてマッカーサーが文書に調印した。マッカーサーが調印した時の時刻は9時8分であった。この後、米･中･英･ソ･カナダ･仏･蘭･ニュージーランドの順で署名が行われた。　

最後にマッカーサーが「今や世界に平和がよみがえり、神が永久にそれを守る事を諸君と共に祈りたい。式を終了する」という言葉で式を締めくくった。終了時刻9時20分。

つつがなく終了したかのように見えた調印式であったが、日本側が署名済みの降伏文章を受け取った時ミスが発覚した。カナダ代表が所定の署名欄に記入せず、誤って次のフランス代表の欄に記入したため、カナダ以降の全代表の署名が１つずつずれてしまっていたのだ。当然日本側はサザランド参謀長に異議を申し立てた。この後一悶着あったようだが、結局記録によると「所定ノ訂正ヲ行ワシメ之ニ『イニシアル』セシメタリ」というかたちでこの問題は決着した。

ミズーリ号上でのマッカーサーの演説

原文

We are gathered here，representatives of the major warring powers，to conclude a solemn agreement whereby peace may be restored．The issues，involving divergent ideals and ideologies，have been determined on the battle fields of the world and hence are not for our discussion or debate．Nor is it for us here to meet，representing as we do a majority of the people of the earth，in a spirit of distrust，malice or hatred．But rather it is for us，both victors and vanquished，to rise to that higher dignity which alone befits the sacred purposes we are about to serve，committing all our people unreservedly to faithful compliance with the obligation they are here formally to assume．It is my earnest hope and indeed the hope of all mankind that from this solemn occasion a better world shall emerge out of the blood and carnage of the past－a world founded upon faith and understanding－a world dedicated to the dignity of man and the fulfillment of his most cherished wish－for freedom，tolerance and justice．The terms and conditions upon which the surrender of the Japanese Imperial Forces is here to be given and accepted are contained in the instrument of surrender now before you．As Supreme Commander for the Allied Powers，I announce it my firm purpose，in the tradition of the countries I represent， to proceed in the discharge of my responsibilities with justice and tolerance，while taking all necessary dispositions to insure that the terms of surrender are fully，promptly and faithfully complied with．

上記演説の日本語約（津島一夫訳）

われわれ主要交戦国の代表は平和を回復する厳粛な協定を締結するため、ここに集った。色々な理想と思想にからむ問題は既に世界の戦場で決定されており、もはやわれわれが討議すべきものではない。また地球上の大多数の人々を代表するわれわれは、不信と悪意と憎悪の精神でここに集ったわけではない。
　勝者も敗者も含めてわれわれに課せられていることは、われわれがこれから追求しようとしている神聖な目的にふさわしい，より高い尊厳を目指して立上がりわれわれ全ての国の国民がここに正式に引き受けようとしている責務を忠実に課すことを誓うことである。
　この厳粛な式を転機として，流血と虐殺の過去からよりよい世界、信頼と理解の上に立つ世界、人間の尊厳と人間の最も渇望している自由、寛容、正義の完成をめざす世界が生れてくることを私は心から希望している。それはまさに全人類の希望でもある。日本帝国軍隊の降伏条件は諸君の前にある降伏文書の中におさめられている。
　私は連合国最高司令官として、私の代表する諸国の伝統にもとづき、降伏条項が速やかにかつ忠実に実行されるようあらゆる必要な措置をとる一方、私に課せられた責務を正義と寛容の心で果す決意であることをここに宣言する。

参考文献・資料一覧

・朝日新聞社編『100人の20世紀』（上）朝日新聞社、1999年
・ダグラス・マッカーサー著、津島一夫訳『マッカーサー回想記』（上・下）朝日新聞社、1964年
・Douglas MacArthur GENERAL OF THE ARMY, REMINISCENCES,　McGRAW－HILL,1964.
（上記の「マッカーサー回想記」の原著）

参考ホームページ

http://www.first.tsukuba.ac.jp/~m
http://www.bekkoame.ne.jp/~nishinom/human/index.htm

（作成者：島大吾）

ニミッツについて

Chester William Nimitz(1885-1966)

年譜

1885.2.24.	テキサス州フレデリックスバーグに生まれる。
1901.9.	アナポリス海軍兵学校に入学。
1905.	同学校を114人中7番で卒業。少尉候補生として戦艦「オハイオ」に乗り込み、極東方面へ練習航海に向かう
1907.1.	少尉に進級し、砲艦「パナイ」の艦長となる。次いで駆逐艦「デカター」の艦長となるが、この艦を座礁させて軍法会議にかけられ、艦長職を解かれる。
1909.5.	第1潜水艦隊に配属され、最初の「プランジャー」を皮切りに1912年まで「スナッパー」、「ナーワル」、「スキップジャック」と次々に潜水艦の艦長を務める。
1912.3.	「スキップジャック」艦長の時、海に落ちたウォルシュ二等機関兵を救助し、人命救助銀星章を授与される。
1913.	ドイツ・ベルギーに派遣され、ディーゼルプラントでエンジンについて勉強。合衆国に戻ってから、コネティカット州グロトンで16年まで給油艦「モーミー」のディーゼルエンジン建造に携わる。
1916.10.	「モーミー」の副長兼機関長となる。
1917.8.	少佐に進級し、大西洋艦隊潜水部隊に配属される。
1918.9.	海軍作戦部長室に入り、潜水艦設計委員会の上級委員として勤務。
1919.	戦艦「サウスカロライナ」副長を一年間務め、巡洋艦「シカゴ」の艦長となる。
1920.6.	真珠湾で潜水艦基地建設の任務に携わり、第14潜水戦隊の司令となる。
1922.	海軍大学に入る。
1925.	海軍大学を卒業し、海軍実戦部隊の副官兼副参謀長兼作戦参謀となる。
1926.	カリフォルニア大学バークレー校で海軍予備士官訓練隊を創設、予備士官課程の教官を務める。
1929.	第20潜水戦隊司令を二年間務める。
1931.6.	サンディエゴの退役駆逐艦群の司令となる。
1933.	アジア艦隊旗艦・重巡洋艦「オーガスタ」の艦長となり、極東へ行く。
1935.	海軍省航海局の次長となる。
1938.5.	第2巡洋艦隊の司令となり、7月には少将に進級、次いで第1戦艦戦隊司令を務める。
1939.6.	海軍省航海局の局長となる。
1941.12.	日本軍による真珠湾攻撃の後、更迭されたキンメル大将の後任としてアメリカ太平洋艦隊司令長官に就任する。その後は連合国軍中部太平洋方面総司令官を兼任しつつ、戦争指揮にあたる。
1944.12.	元帥に昇進。
1945.8.30.	日本に上陸。
1945.9.1.	記念艦「三笠」を見学、海兵隊に命じて歩哨を立てさせる。
1945.9.2.	戦艦「ミズーリ」上での降伏文書調印式、アメリカ合衆国代表として署名。
1945.12.15.	海軍作戦部長となる(～1947.12.15.)。
1948.	海軍長官の特別補佐官に就く。
1949.3.	国際連合のカシミール問題委員会選挙管理委員長に指名される。
1950.	国際連合の無所任親善大使となる。
1952.	国際連合の仕事から離れる。
1956.	海軍兵学校の教科書として文官教官達が海上史『シー・パワー』を執筆するのに協力。
1966.2.20.	サン・フランシスコで死去。

アメリカ代表となった経緯

トルーマン大統領がマッカーサーを連合国最高司令官に任命し、日本占領の最高責任者としたために、陸軍にばかり脚光が当たると海軍から不満が出た。そのためフォレスタル海軍長官が、陸軍が降伏調印式を取り仕切るのであれば、海軍の艦上でそれを行うべきと主張し、トルーマン大統領の故郷の名をとり彼の娘が命名した「ミズーリ」号が良いと提案した。また同時に、マッカーサーが連合国代表ならアメリカ合衆国代表をニミッツにすべきと提案し、受け入れられた(因みに「ミズーリ」号はハルゼー提督の旗艦)。

ニミッツの声明

ニミッツは降伏文書調印式典の後、米本土・米国民向けに公式声明を発表した。以下に掲載する。

Nimitz’s Remarks

On board all naval vessels at sea and in port, and at our many island bases in the Pacific, there is rejoicing and thanksgiving. The long and bitter struggle, which Japan started so treacherously on the seventh of December, 1941, is at an end.
I take great pride in the American forces which have helped to win this victory. America can be proud of them. The officers and men of the United States Army, Navy, Marine corps, Coast Guard and Merchant Marine who fought in the Pacific have written heroic new chapters in this nation’s military history. I have infinite respect for their courage, resourcefulness and devotion to duty. We also acknowledge the great contribution to this victory made by our valiant allies. United we fought and united we prevail.
The Port of Tokyo, which was first opened by Commodore Perry in 1853, is now crowded with United States men o’ war. The process of bringing Japan into the family of civilized nations, which was interrupted when Japan launched her program of conquest, will soon begin again.

Pays Tribute to the Dead

Today all freedom-loving peoples of the world rejoice in the victory and feel pride in the accomplishments of our combined forces. We also pay tribute to those who defended our freedom at the cost of their lives.
On Guam is a military cemetery in a green valley not far from my headquarters. The ordered rows of white crosses stand as reminders of the heavy cost we have paid for victory. On these crosses are the names of American soldiers, sailors, and marines? Culpepper, Tomaino, Sweeney, Bromberg, Depew, Melloy, Ponziani?names that are a cross-section of democracy. They fought together as brothers in arms ; they died together and now they sleep side by side. To them we have a solemn obligation?the obligation to insure that their sacrifice will help to make this a better and safer world in which to live.
To achieve this it will be necessary for the United Nations to enforce rigidly the peace terms that will be imposed upon Japan. It will also be necessary to maintain our national strength that a level which will discourage future acts of aggression aimed at the destruction of our way of life.
Now we turn to the great tasks of reconstruction and restoration. I am confident that we will be able to apply the same skill, resourcefulness and keen thinking to these problems as were applied to the problems of winning the victory.

（The　New　York　Times1945年 9月2日付の記事より）

日本語訳

海洋、港内にいる全ての海軍軍艦の上に、そして太平洋の多くの我々の基地において、喜びと感謝の祈りが満ちている。１９４１年１２月７日に日本が非常に不実なやり方で始めた、長く苦しい戦いが終わりを迎える。
私は、この勝利をもたらすことに貢献したアメリカ軍を、とても誇りに思う。アメリカは、彼らを誇ることができる。太平洋で戦った合衆国陸軍、海軍、海兵隊、沿岸警備隊、商船隊の、将校そして兵士は、合衆国の軍の歴史に英雄的な新しい章を記したのだ。私は彼らの勇気、機知、義務への献身に対して、無限の尊敬を抱く。我々はまた、勇敢な同盟者によってなされたこの勝利に対する偉大な貢献のことも、認識している。団結して我々は戦い、団結して我々は勝利したのだ。
１８５３年、ペリー提督によって最初に開かれた東京港は、今や戦争に参加した合衆国兵で埋め尽くされている。日本を文明国の一員に迎え入れるプロセスは、日本が侵略計画を打ち出したことで一旦中断されたが、まもなく再開されるだろう。
死者へのたむけ
今日、世界中の自由を愛する国民すべてが、勝利を享受し、われら連合国の成果を誇りに感じている。我々はまた、命を代償に我々の自由を守った人々に、敬意を表する。
グアムには、私の司令部から程遠くない緑の谷に、軍の共同墓地がある。整然とした白い十字架の列が、我々が勝利のために払った莫大な犠牲を思い起こさせるものとして、立ち並んでいる。これらの十字架には、アメリカの兵士、水兵、海兵隊員の名前が刻まれている―カルペッパー、トメイノ、スウィーニー、ブロンバーグ、デピュー、メロイ、ポンツィアーニ―民主主義を代表する名前だ。彼らは腕を組み、兄弟として共に戦った。彼らは共に倒れ、今は並んで眠っている。彼らに対して、我々は厳粛な義務を持っている。彼らの犠牲が、よりよくかつより安全な世界をつくる助けになるであろうことを保証する、という義務である。このことを達成するために、連合国は、日本に課されることになる平和の条件を、厳格に施行する必要がある。また、我々の生活様式の破壊を意図した未来の攻撃行動を挫くことのできるレベルで、我々の国力を維持することも必要であろう。
今や我々は、再建と回復という重大な仕事に立ち向かっている。我々は、勝利を得るためにそうしてきたように、これらの問題に対しても同じ手腕と機知、熱意ある思考を傾けることができるだろうと、私は確信している。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（訳：池渕）

ニミッツと東郷平八郎

ニミッツは1905年に戦艦「オハイオ」に乗ってアジアに練習航海で来た時、日本にも立ち寄り、宮中で開かれた日露戦争凱旋園遊会に参加して、その席で東郷平八郎に会っている。これをきっかけにして、その時以来、彼は東郷を尊敬するようになった。1934年、「オーガスタ」の艦長として再度来日した時に、時を同じくして行われた東郷の国葬に参列するという奇縁もあった。

日本の降伏後、ソ連のデレヴィヤンコ将軍が、日露戦争の日本側勝利の記念物である戦艦「三笠」などは廃棄すべきだと主張したのに対し、アメリカの参謀部長ウィロビー少将が、日本の記念物を破壊して反感を買うのは避けるべきだと主張、「三笠」は廃棄を免れるという一幕があったが、これにもニミッツの意思を窺わせる。

実際、太平洋戦争に関する直接的な自伝は書かなかったニミッツだが、『文藝春秋』の昭和33年2月号に”「三笠」と私”という題で短い手記を寄せている。この中でニミッツは、日露戦争の日本海海戦の折の旗艦であったこの船がぞんざいに扱われてきたことを嘆き、更に続けて「この軍艦の全体か、さもなければ一部が日本の最も偉大な海軍軍人の一人をしのぶ記念物として保存さるべきだ」と書く。さらに最後は「この私の一文が、原稿料に価するならば、その全額を東郷元帥記念保存基金に、私の名で寄付していただきたい」という言葉でこの文章を締め括っている。この原稿料2万円(56ドル)を呼び水に、「三笠」の復旧・保存のための資金が集まった。

また、ニミッツは東郷神社の再建にも関心を抱いており、『シー・パワー』の太平洋戦争を扱った部分の日本語版『ニミッツの太平洋海戦史』(恒文社、1962年)の印税も、神社再建のために寄付した。いずれも、ニミッツと東郷平八郎、あるいは日本との意外なつながりを示すエピソードである。

《参考文献・参考ホームページ》

E．B．ポッター著南郷洋一郎訳『提督ニミッツ』フジ出版社、1979年
C．W．ニミッツ/E．B．ポッター著実松譲/冨永謙吾訳『ニミッツの太平洋海戦史』恒文社、1976年

http://www.history.navy.mil/
http://www.bekkoame.ne.jp/~nishinom/index.html

（作成者：池渕泰正）

ハルゼーについて

William Frederick Hails, Jr（1882～1959）

経歴（PROMOTIONS）

Graduated from Naval Academy - Class of 1904
海軍少尉　Ensign- February 2, 1906　※１
海軍中尉　Lieutenant (junior grade) - February 2, 1909
海軍大尉　Lieutenant - February 2, 1909　※２
海軍少佐　Lieutenant Commander - August 29, 1916
海軍中佐　Commander - February 1, 1918　※３
海軍大佐　Captain - February 10, 1927
海軍少将　Rear Admiral - March 1, 1938　※４
海軍中将　Vice Admiral - June 13, 1940
海軍大将　Admiral - November 18, 1942
海軍元帥　Fleet Admiral - December 11, 1945

（Naval Historical Centerの公式プロフィールから抜粋）
Naval Historical Center : http://www.history.navy.mil/faqs/faq36-5.htm

※ １　海軍拡張政策にもとづき、海軍兵学校を予定より数ヶ月前に卒業。それから「待命」士官として、２年間の勤務のあと海軍少尉になる方式だった。

※ ２　中尉として少なくとも２年勤務しなければならないはずが、当時は大尉の階級にひどく欠員があったため、少尉から大尉まで一度に昇進した。

※ ３　第一次大戦でアメリカの参戦が決定し、イギリスへの派遣にあたって一時的に中佐となり、駆逐艦の艦長としてUボートと戦う。２１年、正式に中佐に昇進した。

※　４　36年12月に海軍少将に選抜されていたが、欠員の出た38年３月にようやく昇進した。

1882年生まれ、1900年７月海軍兵学校に海軍士官候補生として入学。卒業後に初めて配属された戦艦の名前も「ミズーリ」だった。彼の洋上経歴は「ミズーリ」（愛称ミズィ）に始まって「ミズーリ」（愛称マイティ・モー。降伏調印式の会場となった）に終わる。

1927年10月大佐に昇任、巡洋艦の艦長となる。この年から航空機に興味を持ち、個人的に操縦を学ぶ。ペンサコラ航空基地で航空士の教育課程を受ける気があるか、と言われるが視力検査に失敗し、断念。ハルゼーは22年間にわたり駆逐艦で洋上勤務するという無比の記録を持っていた。（当時の士官の間でも昇任のために多彩な洋上経験が必要とされていた）

1932年ハルゼーは伝統的に高位指揮官への道を開いてくれる海軍大学校に入学。当時ハルゼー50歳で、高齢すぎたが下級課程に入った（ニーミッツは1922年37歳で入った）。議会の規定では、海軍航空基地司令官、水上機母艦艦長、空母艦長は認定された航空士でなければならないため、航空オブザーバー課程に入った。しかし、パイロットのおかれる状況をより把握するためにハルゼー自身も正規のパイロット学生として訓練を受けることを志願した。数ヶ月の激しい訓練のため、90キロあった体重が70キロまで減ったという。

1941年12月７日パール・ハーバー奇襲のときハルゼーは中将で、航空戦闘部隊司令官として太平洋艦隊空母部隊を指揮していた。

ハルゼーの太平洋戦争における戦歴

1942年	2.1	マーシャル諸島、ギルバート諸島の攻撃
	4.18	空母ホーネット、B－25中距離爆撃機により東京に初の空襲
	5.26	2ヶ月前からの皮膚病悪化により入院　ミッドウェー海戦に参加できず
	6.4	ミッドウェー海戦の主戦闘、翌日から本土の病院へ
	9.21	ハルゼーは一時的に、太平洋艦隊航空部隊司令官の職を与えられ、戦線に復帰
	10.18	南太平洋軍司令官と南太平洋地域司令官に任命される。
	10.26	サンタクルーズ海戦（＝南太平洋海戦）
	.11.12-13	ガダルカナル海戦（第３次ソロモン海戦）。この功績によりから、11.26に海軍大将に昇進
1943年	5.15	海軍任務部隊が艦隊規模に格上げされ、正式番号を設定される。ハルゼーの南太平洋の戦闘艦群は合衆国第3艦隊と呼ばれる。第5艦隊＝中部太平洋、パールハーバーを基地とし、スプルーアンスが指揮。第7艦隊＝南西太平洋軍マッカーサーの指揮下の小規模な海軍部隊
1944年	10.23-25	レイテ湾海戦（＝比島沖海戦）
1945年	5.18	スプルーアンスと交代し、沖縄戦の指揮をとる。かつての旗艦が修理中だったため、ミズーリに乗艦する。
	6.21	沖縄占領宣言
	7.1-8.13	第3艦隊、日本本土の連続攻撃に参加
	8.15	終戦の電報届く。
	9.2	ハルゼーの旗艦ミズーリ艦上で日本の降伏調印式が行われる。
1946年	5.13	ハルゼーとニミッツ、永久海軍元帥の宣誓を行う。
1946年	12月初	自身の要求により海軍の現役を退く。

降伏調印式でのエピソード

いくらかの象徴的なゼスチャーとして、「ミズーリ」は、ペリーが日本に国際通商を開かせようとして九十二年前、投錨した付近に錨泊した。

通例ならば調印式ではニミッツの将旗が掲げられるはずが、マッカーサーが自分の将旗も掲げたいと言ったため、二つの将旗が正確に同じ高さで上げられた。ニミッツの青の将旗がメインマスト簪の右舷端で、マッカーサーの赤い将旗が左舷端だった。

調印の際に使うために、イギリス太平洋艦隊司令官フレイザー大将がマホガニーのテーブルと革張りの一対の椅子を貸し出すと申し出た。ただ降伏文書が予想以上に大きかったため、急遽乗組員食堂のテーブルが緑のベーズ布をかぶせて使われることになった。

マッカーサーが連合国軍を代表して署名し、次にニミッツが合衆国を代表して署名している間、マッカーサーがハルゼーを通して爆撃機群に合図した。各国代表が署名した後、マッカーサーが式典の終了を告げたときに空母機とB－29機群が東京湾とイギリス、アメリカ艦船の上空を飛行した。

日本代表団が立ち去ろうとしたときに日本の外務省補佐官が気づいたのだが、降伏文書の日本側の写しの署名欄が誤って記入されていた。カナダ代表が一行とばしてフランスの欄に署名していたのだった。そこから全て一行ずれて、最後のニュージーランド代表は欄外の余白部に署名していた。そこでサザーランドが国名欄を万年筆で線を引いて消し、署名の下に国名を記入した。

署名のときにマッカーサーの後ろに控えていたジョナサン・ウェーンライト将軍とサー・アーサー・パーシバル将軍は満州の捕虜収容所から飛んできていた。ウェーンライトは1942年フィリピンで降伏したとき、パーシバルは同じく42年シンガポールで降伏したときから監禁されていた。

授業の発表で既出だが、ハルゼーがペリーのアメリカ国旗を海軍兵学校博物館から取り寄せた話も出ている。

戦艦「ミズーリ」が会場となったのは「トルーマン大統領の出身州をたたえるため」とある。さらには第三艦隊の旗艦としての規模と、当時の艦隊の位置が条件に適ったといえる。

また、重光葵が署名のために椅子に座ったとき松葉杖を落として周囲を驚かせたこと、ペンを探すためにポケットをまさぐっていて、秘書がテーブルの上にあるものを渡してやったことなども記述がある。　

（E.B.Potter, BULL HALSEY, 1985　より）

参考文献

E.B.Potter, BULL HALSEY, 1985.
E.B.ポッター著、秋山信雄訳『「キル・ジャップス！－ブル・ハルゼー提督の太平洋海戦史』、光文社、1991年。

（作成者：北山雅邦）

フランス代表ルクレールについて

Philippe Leclerc(1902～1947)

Philippe Leclercは、レジスタンス中の暗号名で、本名は、Philippe Marie de Hauteclocqe

ルクレールの略歴

1902年	11.22	Belloy-Saint-Leonardの貴族の家に生まれる。
1924		サンシール（フランス正規の陸軍士官学校の通称）を卒業。モロッコにおいて、民族独立運動を起こしたリフ族との戦いで活躍。
1924		サンシール（フランス正規の陸軍士官学校の通称）を卒業。モロッコにおいて、民族独立運動を起こしたリフ族との戦いで活躍。
		第二次世界大戦までには参謀本部将校に昇進。
1940	5～6	二度ドイツ軍に捕らえられるが二度とも逃れる。
1940	7	ロンドンにてドゴールと合流。
		アフリカにおいて、対イタリア戦などで活躍。
1942		将官に昇進し、自由フランス傘下のアフリカ全軍の指揮権を掌握。
1943		2500kmをイタリア軍と戦いながら踏破。チュニジア、トリポリで戦闘。フランス第二装甲師団の師団長となる。


1944	6	ノルマンディー上陸作戦に参加。
	8.24	パリ解放（一番乗り）。
	8.25	ドイツ軍司令官ディートリヒ＝フォン＝コルティツ将軍の降伏に立ち会う。
		ストラスブール、ボルドーを解放。ドゴールによりインドシナ駐留フランス軍最高司令官に任命。
1945	.9.2	日本の降伏文書にフランス代表として署名。
1945	10	ヴェトミンの民族独立蜂起を鎮圧すべくサイゴンに赴任（勝利の見込みが立たないとして、和平交渉を進める。ホー・チ・ミンもこれを受け入れる意向だったが実現せず）。
1946		北アフリカ駐留フランス軍検閲総監に任命される。
1947		大将に昇進。
1947	11.28	アルジェリアのコロンベシャール付近での飛行機事故により死亡。
1952		元帥の位を授与される。

なぜ降伏調印式の代表に選ばれたか？

この問題について参考にした文献の中には明記されていない。ルクレールは主にアフリカ・ヨーロッパで活躍しており、日本との戦闘の記録も見られない。

調印式の前にインドシナ駐留フランス軍最高司令官に任命されており、日本に近いフランス勢力圏の最高責任者として選任されたと思われる。

自伝、伝記等について

日本語で読めるルクレールの伝記はない。英語で読めるものもない。フランス語のものがあるが、発見困難で参照できなかった。

参考文献

Encyclopedia of World Biography.
アンリ・ミシェル著『自由フランスの歴史』白水社、1974年。
レイモンド・カルティエ著『全史第二次世界大戦実録』小学館、1972年。
アレクサンダー・ワース著『フランス現代史』みすず書房、1958年。

（作成者：間宮健介）

オーストラリア代表ブレーミーについて

Tomath Albert Blamey (1884～1951）

経歴

1884年オーストラリアのニューサウスウェールズ州生まれ。第一次世界大戦中にオーストラリア軍参謀長となり勝利に大貢献。1925年にヴィクトリア州警察長官に就任。1939年第二次世界大戦勃発の後、北アフリカでオーストラリア軍を指揮。

1941年ギリシャからの撤兵を指揮。1943年太平洋における連合軍の指揮を命じられる（オーストラリア軍は当時マッカーサーの指揮下にあり、ブレーミーもマッカーサーに従属していた。その立場においてという意味）。1944年実務から離れる。1945年ミズーリ号上の降伏調印式にオーストラリア軍総司令官として参加。1950年オーストラリア初の陸軍元帥となる。1951年死去。

太平洋戦争中の軍歴

第二次世界大戦において1941年にギリシャ撤兵を指揮した後、SWPA(South West Pacific Area)に戻る。太平洋戦争勃発後の1942年9月、ニューギニアで対日戦の指揮をとる。また、ニューギニア戦全体を通じてオーストラリア軍はアメリカ軍が迂回して通過した日本軍の残存拠点を掃討するという任務を担った。

1944年7月中旬、ブレーミーはマッカーサーから、これ以後の北部ソロモン諸島からニューブリテン島およびオーストラリア領ニューギニアにおける日本軍の｢戦力消耗長期作戦｣の責任をとるよう要請された。ブレーミーはフィリピン作戦への参加を望んでいたが、この命令に従った。

そして1944年の終わり、オーストラリア軍はアメリカ軍を、オーストラリア領ニューギニア島、ニューブリテン島、ブーゲンヴィル島（すべて現パプアニューギニア）の守備任務から解放した。GHQ（連合軍総司令部）はブリズベンから移動し、ブレーミーはSWPAにおける全オーストラリア軍を指揮するために前線基地をホーランディア（Hollandia）、のちにモロタイ島に移した。それとともに、彼は、パプア＝ニューギニアにおけるオーストラリア軍の作戦は、ラエに置かれたV.A.H.Sturdee中将指揮下の第一オーストラリア陸軍の指揮下に置かれるとした。

このようにしてブレーミーはニューギニアにおける日本軍掃討作戦の指揮をとった。この翌年の１９４５年に彼は実務から離れてたので、これが最後で最大の作戦となった。

ミズーリ号上調印式への参加

当時ブレ―ミーはオーストラリア陸軍総司令官であり、オーストラリアの代表としてこの式典に参加することはごく自然な流れであろう。

年譜

1884年	オーストラリア、ニューサウスウェールズ州生まれ。
	第一次世界大戦中にオーストラリア軍参謀長となり勝利に大貢献。
1925	9月1日ヴィクトリア州警察の長官となる(～第二次世界大戦)
1939	第二次世界大戦勃発。北アフリカにおいてオーストラリア軍を指揮(～1942)。 (オーストリアは9月にドイツとの戦争に参戦を決定)
1941	ギリシャ撤兵を指揮。 (12月からオーストラリアは防衛政策指揮権をイギリス（UK）からアメリカ（US）に移す【～翌年４月までに】)
1942	9月ニューギニアで指揮をとる(日本軍追討を目的)
1943	太平洋における連合軍の指揮を命じられる。
1944	軍の実務から離れる。
1945	9月2日、ミズーリ号上降伏調印式に参加。
1945	9月9日、モロタイ島降伏調印式にオーストラリア陸軍総司令官として参加。
1950	9月16日、オーストラリア初の陸軍元帥となる。
1951	死去。

モロタイ島降伏調印式

1945年9月9日、現インドネシア領モロタイ島で、ブレーミーはオーストラリア陸軍総司令官として日本軍のオランダ領東インド諸島の公式降伏調印式に参加した。この際にブレーミーが演説をおこなっているので、その一部を掲載する。

(原文)

”..In receiving your surrender I do not recognize you as an honorable and gallant foe, but you will be treated with due but severe courtesy in all matters.
I recall the treacherous attack on Australian ally, China. I recall the treacherous attack upon the British Empire and upon the United States of America in December 1941, at a time when your authorities were making the pretense of ensuring peace between us. I recall the atrocities inflicted upon the person of Australian nationals as prisoners of war and internees, designed to reduce them by punishment and starvation to slavery. In the light of these evils I will enforce most rigorously all orders issued to you, so let there be no delay or hesitation in their fulfillment at your peril.
The Japanese navy has been destroyed. The Japanese merchant fleet has been reduced to a mere fraction. The Japanese armies have been beaten everywhere and all that remained for them was to await their total destruction. Japanese cites lie in waste and Japanese industry has been destroyed. Never before in history has so numerous a nation been so completely defeated. To escape the complete destruction of the nation, the Emperor of Japan has yielded to the Allied forces, and an instrument of total surrender has been signed in his name. He has Charged you to obey the orders which I shall give you.
In carrying out these orders the Japanese army and navy Organizations will be retained for convenience. Instructions will be issued by the designated Australian　commanders to the commanders of the respective Japanese forces, placing upon you and your subordinate commanders the responsibility for carrying out your Emperor's directions to obey all orders given by me to you.
You will ensure that all Allied personnel, prisoners of war or internees in Japanese hands are safeguarded and nourished and delivered over to Allied commanders. You will collect, lay down and safeguard all arms, ammunition and instruments of war until such time as they are taken over by the designated Australian commanders. You will be given adequate time to carry this out.
An official date will be named and any Japanese found in possession, after that date, of any arms, ammunition, or instrument of war of any kind will be dealt with summarily by the Australian Commander on the spot…”

(日本語訳)

　諸君の降伏を受諾するにあたり、私は諸君を尊敬すべき勇敢な敵であるとは思わない。しかし、諸君は当然の償いをすべきように扱われることになるが、その際もあらゆる点で礼儀は保証されるであろう。
　オーストラリアの同盟国、中国へのあの裏切りの攻撃が思い出される。大英帝国への、そして1941年のアメリカ合衆国へのあの背信の攻撃が脳裏に浮かぶ。当時諸君らの政府が私たちに保証したのは見せかけの平和だったのだ。捕虜として捕らえられたオーストラリア国民に課されたおぞましい行為が眼前に映る。諸君らは非情な扱いと、奴隷のようになるまで飢えさせる事で彼らを薄弱させることを目論んだのだ。このような劣悪な行為を頭に入れ、私は諸君に課されたあらゆる命令を最大限に厳しく執行する。そのためには、その執行に際して一切の延期と躊躇を排除せねばならない。
　日本の海軍は壊滅させられた。日本の商業船はもうほんの少ししか残っていない。日本の陸軍はあらゆるところで打ちのめされ、彼らはもう総崩れになるのを待つのみである。日本の街は荒地となって横たわっており、産業は破壊された。これほどまでに完膚なきまでに打ちのめされた国は史上まれである。完全な崩壊を免れるため、大日本帝国は連合国軍に降伏し、総合的な降伏文書にもその名において署名した。大日本帝国は、諸君らが私の課す命令に従うように指示した。
　これらの命令を遂行するのに便宜を図るため、日本の陸海軍は維持される。指令は任命されたオーストラリアの司令官から個々の日本軍の司令官に発令される。そして、諸君およびその下級司令官らに、諸君らの天皇の、私からの諸君への命令に従えという指令を遂行するための責任を課す。
　諸君には日本の手の内にあるすべての連合軍の人員や捕虜について、命を守り、必要な世話を施し、そして連合軍の司令官に引き渡すことを保証してもらう。諸君はあらゆる武器、弾薬、戦争に使う機器のすべてを集め、手放し、そしてそれらを任命されたオーストラリアの司令官が引き継ぐまで保管してもらう。これには十分な時間が与えられる。
　公式的な日時はあとで指定されるが、その後に武器、弾薬、あるいはいかなる種類であっても戦争に使用する機器を所持している日本人が見つかった場合には、オーストラリアの司令官によりその場で即座に処分されることになる・・・

モロタイ島降伏調印式におけるブレーミーの写真

モロタイ島調印式参考Webサイト

http://www.pacificwrecks.com/history/morotai_surrender.html

参考文献・参考URL

James Wood, The Forgotten force:the Australian military contribution to the occupation of Japan, Allen&Unwin,1998,(Army military history series Issues).
David Day, THE GREAT BETRAYAL:Britain,Australia&the onset of the Pacific War,Augs&Robertson Publishers,1988.
ラファエル＝スタインバーグ著、小山田義文訳『ライフ第二次世界大戦史－南太平洋の戦い』、タイムライフブックス、1979年。

参考URL：

（作成者：玉井啓介）